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イスナの町で(8)
広間は接種を待つひとびとでひしめいていた。
それでもみんな騒ぎ立てることもなく、順序正しく大人しく自分の番が来るのを待ち、お礼を言って出て行く。
事の次第を聞き、出先から慌ててとんぼ返りしたキリヤと、その様子を3人で見守っていた。
ルースはすっぽりと俺を抱え込んで離さない。
ルースがぽつりと呟いた。
「統制のとれた軍隊のようだな。」
「俺達はならず者だが自分達で決めた規律は守る。
お妃さんよ、手荒な真似をして悪かったな。
レイチェやみんなを助けてくれてありがとう。礼を言う。
あんたのお陰で大切な命を失わずに済んだ。」
「何っ!?手荒な真似だとっ!?
お前、霙に何を」
「ルース、大丈夫だから。落ち着いて。
ねぇ、イスナと仲良くできないの?
元々は同じ国でしょ?」
「そいつらが勝手に領土内で引き籠るから、こんなややこしいことになってるんじゃないか。」
「何だと!?俺達を排除したくせに何言ってやがる!」
「排除!?そんなことした覚えはないぞっ!」
「嘘を言うな!先代の時に流刑地のような扱いをしたくせに何言ってやがる!」
「……ちょっと待て。先代?流刑地?
親父は国民をとても大切にしてきたんだ。
監獄は北の外れの塔にあるから、わざわざこのイスナを選ぶはずはない。
いくら犯罪を犯した者とはいえ、最低限の権利は守ってやっていたし、流刑地なんて北の塔以外にはそんなものは元々なかったはずだ。
いや、待てよ…そもそも誰がイスナを今のような扱いにし始めたのか……」
「……どういうことだ?
ルース、お前この期に及んで嘘の上塗りをしているのではないだろうな?」
「みくびるな!……しかし、変だな。」
「…ねぇ、誰か黒幕がいるんじゃないのか?
イスナを使って国王を陥れようとする人が。」
ルースとキリヤが同時に俺の顔を見た。
「戦闘力のある者同士を戦わせて、利益を得るのは誰か、ってこと。
国王の失脚を狙って得をするのは誰なんだ?」
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