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イスナの町で(9)

ルースとキリヤは、ハッとした顔をして互いの顔を見合わせた。 王を王とも思ってない、さっきからタメ口のキリヤが尋ねた。 「言われてみればそうだ。 親父の代からそうだったから、てっきり国の暴挙のせいだと思っていたが…何故今のような扱いになったのかうやむやになっていた。 ルース、城内で何か怪しい動きはないのか?」 ルースは俺の方をチラリと見て、何か言い淀んでいる風に見えた。 「俺なら大丈夫。 もし何か隠していることがあるなら教えてほしい。 ルースがいてくれるなら……俺は何も怖くないから。」 「霙……」 「おいおい、ラブシーンなら自分の城に帰ってからにしてくれ。 おい、ルース。 お前何か思い当たる節があるんじゃないのか?」 俺を見つめながら黙って頷いたルースは、俺の手を握りしめて言った。 「霙、異世界に来たばかりのお前を余計に怖がらせたくなくて、秘密裏に動いていた。 お前は命を狙われている。」 「え?」 「犯人の目星はついている。数々の証拠もあるのだが、決定打がなくて手をこまねいているのだ。 相手が相手なだけに下手なことはできぬ。 だから、お前を守りつつそいつらの動きを見張っていたのだ。」 「犯人は誰なんだ!? それとこのイスナと何か関係があるのか? ルースの命が狙われるのなら分かるが、何でお妃さんなんだ?」 「犯人は……」 一瞬憂い顔をしたルースは、一呼吸おいて俺の目をしっかりと見て言った。 「俺の義弟ラジェと神官グルディだ。 俺の失脚が目的だ。自分達の手でこの国を牛耳るために。 イスナの存在はそれに利用されているだけだと思う。今、ハッキリとそれが分かった。 番を失った国王は退座する決まりだ。 正攻法では俺に手を掛けることはできないと踏んでいるのだ。 俺を狙うより霙を狙う方が容易いからな。 それで霙を狙っているのだろう。」 吃驚し過ぎた俺は、ルースの真剣な瞳を見つめるだけだった。

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