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イスナの町で(10)
「霙。」
「はっ、はいっ。」
「どんなことがあっても、俺はお前を守る。
だから心配するな。」
命を狙われてるって……殺される!?
今まで生きてきた中であまりにも現実味のない言葉に、ぶるぶると身体が震えてきた。
異世界に連れて来られた挙げ句に命を狙われている!?
マンガかドラマじゃないんだよ!?
そんな俺をルースは更に抱き寄せ包み込んだ。
俺は抗いもせず逞しい腕の中に収まった。
ルースの温もりと匂いが俺を纏い、次第に身体の震えが収まってきた。
それと共に、怒りの感情が沸き起こってきた。
自分達の私利私欲のために、何の罪もないイスナの人達を苦しめ、無駄な戦いを続け、ひとの命を奪おうとしてきたなんて。
俺は心地よいルースの胸をそっと押し返し、見上げて言った。
「許せない…ひとの命を何だと思ってるんだ。
イスナの人達を利用するなんて…許せない。
それも犯人はルースの義弟!?どうして?」
「……分からない。
誑かされたのか、元々そんな野望を持っていたのか。俺達は異父兄弟でも上手くやっていると信じていたのだが……。
何れにせよ…残念だがそういう思いでいるということには間違いがないのだ。
キリヤ。
霙の言葉で確信した。
俺達は何者かにずっと踊らされていたのだ。
知らなかったこととは言え、今までのことを心から詫びる。
許してほしいとは言わないが……すまなかった。」
「そう言われたら俺達だって…親の代から『アイツらは敵だ』と言われ続けて育ってきたから、そうだと信じ込んでた。
俺達は無駄な戦いをしてきた訳だ。
ハッ、アホらしいな。
今まで何をやってきたんだろう。
こうなったら、そいつらの尻尾、絶対に掴んでひっ捕まえて二度と娑婆に出て来れないように生涯幽閉してやる!」
キリヤは鼻息も荒く地団駄を踏んでいた。
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