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イスナの町で(12)

俺は両手でルースの手を包み込んだ。 指先が、冷たい。 包み込んだその手にも言い聞かせるように、ギュッと力を込めた。 「ルース。 俺は天涯孤独で他人の愛情を知らずに育った。 分別がつく年頃になっても不運続きの自分の運命を憂いていた。 一生、幸せにはなれない、そう思っていた。 だけど……この国に来て……たった俺ひとりのために、沢山の人達が食べ物から生活から何もかも研究して勉強して準備してくれてて……本当に感謝している。 それに何よりも……ルースが俺のこと番だと言ってくれて、俺に、その…んー……あ、あ……えっと、あ…い………うーっ、その」 「えーい、まどろっこしい! お妃さんよ、ハッキリ言えよ! 『愛されてる』『愛してる』んだろ!?」 「何でキリヤが言うんだよっ!」 俺は真っ赤な顔でキリヤをギロリと睨むと、再びルースの目をしっかりと見つめて言った。 「俺がルースの本当の家族になるっ! ずっと、ずっと側にいてやるっ! (愛してるから、ずっと愛してくれよ!) だから……そんな顔、するな、よ。」 照れ臭くて『愛してる』は言葉にできず、心の中で叫んでいた。 ルースは大きく目を見開き俺を見つめたまま固まっている。 あれ?返事がない。 やっぱり…ストレートに伝えたほうが良かったのか? 「ルース?ふえっ!?」 ルースの顔が間近にあった。 うわぁ、どアップ!何処に視線を落としていいのか分からず、俺は金色に輝く瞳を見つめた。 綺麗だな。ずって見ていたい。 吸い込まれそうに澄んだ濁りのない瞳。 多分、ルースの心と同じなんだろうな。 その瞳から、スーッと一筋の涙が零れ落ちた。 「ルース…」 ふにゃ、と相好を崩したルースは、くっくっと喉奥で堪えた笑い声をあげた。 オデコをくっ付け、グリグリと擦り合わせると 「霙……俺を受け入れてくれたのか……全く、お前には敵わない。 でも、霙の気持ち、ちゃんと言葉で伝えてほしい。」 甘えるように言われ、身体が火照ってきた。

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