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イスナの町で(17)

「結婚式ぃ!?」 「何驚いてんだよ。ルースとアンタの結婚式だよっ! お祝いは何がいいんだ? 早めに言ってくれよな。遠国の物なら取り寄せるのに時間が掛かるからさ。」 「…ルースと俺の……」 「そうだな。後で霙と相談する。 遠慮なく好きな物を貰うが、いいのか?」 「はっ!俺を誰だと思ってるんだ!? このイスナのキリヤ様だぞ!? 一国の王に祝いの品を贈るくらいの財はある。 心配するな。 …ん?お妃さん、どうした?ははーん…結婚してその後のこと考えてんのか? 結婚式=初夜だもんなぁ……アンタ初心なくせに、結構いやらしいんだな。あははっ!」 『結婚式』という言葉に反応した俺に、キリヤが見当違いのとんでもない揶揄いの言葉を投げ掛け、俺は真っ赤になりぷるぷる震えながら叫んだ。 「なっ!?何言ってんだよっ!キリヤのばかっ! そんなんと違うしっ!……くっそっ…とんでもないお高い物にしてやるからなっ!」 「はははっ!どうぞどうぞ。」 「失礼しますっ!お嬢の熱が下がりました!」 「何っ!?本当か!?すぐに行く! ルース、お妃さん、ありがとう!また後で!」 キリヤが慌てて出て行った。 館の中も大騒ぎだ。 ふぅ……俺は気を取り直して、ルースをチラ見した。ルースは俺を甘ったるい目で見つめている。 そんなルースにドキドキしながら、心からお礼を伝えた。 「良かった…ドリナ先生の見立ての通り、レイチェは軽く済んだんだ……ルース、本当にありがとう。」 「礼を言うのは俺の方だ。 まさかイスナと友好的な関係になれそうだとは思ってもみなかった。 これも霙のお陰だ。本当にありがとう。 さ、俺達も戻ろう。 御馳走様。ここの料理もうちのシェフ達に負けずとも劣らず美味かった。」 「恐れ入りますっ!」 それを聞いた給仕の男が跪いた。 「御馳走様。 皆んなも俺達に気を遣わなくてもいいから、ゆっくりと休んでね。」 「霙様……ありがとうございますっ!」 俺は当たり前のようにルースに腰を抱かれ、客間に戻ってきた。 遠くで人の声や走り回る音が聞こえる。

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