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確かめ合う(2)

濃厚なキスを繰り返しながら、ルースの手がゆっくりと俺の身体のラインをなぞり始めた。 言葉には出さないけれど、大切な壊れ物を扱うような手つきで。 シュ…シュル…シュ… 衣擦れの音がやけに耳につく。 俺は抵抗することもできず大きく息を吐きながら、ルースのなすがままに愛撫されていた。 衣服に隠れない首元や、手首から先を擽るように骨格を確かめながら触ってくる。 触れる指が、手の平が。 醸し出す空気が俺を狂わせていく。 これ以上は………堪らずに声を掛けた。 「…ルース…」 「霙は俺のものだ。細胞の一つ一つまでも。 あぁ…愛おしくて愛おしくて気が狂いそうだ。 霙…会いたかった。ずっとずっと会いたかったんだ。 この手でこの腕に抱きしめたくて……やっと会えた。」 切ない声音に胸がぎゅっと引き絞られる。 そんなに、そんなにも俺のことを待って待って待ち望んでいたのか。 「ルース…ルース……」 俺はルースの名前を呼ぶことしかできなくなっていた。 そんな強い思いにどんな言葉を掛ければいい? どう返せばその思いに応えることができる? 『アイシテル』なんて足りないよ。 俺がルースの存在を全く知らない間も、ずっと俺のことだけを一途に見つめてくれていた、その思いに。 その代わりにありったけの思いを込めて抱きしめた。 ほぅ……と大きな吐息が髪に触れた。 「霙…… お前を抱きたい。 ひとつになりたい。 そう願うのはいけないことなのか? 心から愛する者と愛し合うことはダメなのか? このまま一緒にいたら、もう理性が効かない。 でも……霙の嫌がることはしたくないんだ。 嫌ならもうひと部屋用意してもらう。」 ルースはそう言って、腰に回した俺を手をそっと解き、少し距離を取った。 そして俺を膝から下ろして横に座らせた。 口元は微笑みを浮かべているが、その瞳は悲しみに覆われていた。

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