78 / 191

激震(4)

身体の震えが止まらない。 ぐるりと周囲に視線を走らせる。 何処から狙われた?警備は万全過ぎる程に万全だというのに。 イスナを出発する時と城に戻る時が一番狙われやすいからと、城の軍隊もイスナの防衛軍も周囲に目を光らせていたというのに。 狙われたのは間違いなく、俺、だ。 俺を庇ってくれた最愛のひとルース…ルースは助かる!?絶対に助かる!大丈夫だ! だって、あのルースだぞ!?最強の龍王だぞ!? それに、ドリナ先生達もついてる! 肩から落ちそうになっていた毛布を外すと、俺はキリヤのあとを追い掛けた。 どんな奴だ!? 誰に頼まれた!? ルースに万が一何かあれば……同じ目に遭わせてやる! 息を切らして広場に行くと、まだそこは騒然としていて。 城の軍隊とイスナの屈強な男達が野次馬達を整理しており。 その真ん中に、全身真っ黒の服に身を包んだ男が取り押さえられ膝をつき、顔を地面に押しつけられていた。 口には猿ぐつわを噛まされている。 コイツが…コイツが俺の大切なルースを…… 俺はキリヤを追い越した。 「お妃さんっ!?」 俺は男の前に立ちはだかると軍隊長の足を顔から退けさせ、男の襟を掴みその顔を見た。 俺と同じくらいか少し若いくらいか。 無機質な無感情な瞳。 コイツ、頭イカれてんじゃないか? 「何で、何で俺の大切なルースを傷付けた!? 誰に頼まれたんだ!? 狙うなら俺だけを狙えばいいじゃないか! 正々堂々と受けてやるっ! アンタにだって、守りたい大切なひとがいるんだろっ!? 俺にとってルースは自分の命より大切なんだ! それを…それをよくも……」 男がピクリと身体を震わせた。 さっきまで感情の無かった瞳に、悲しみの色が現れた。 「お妃さんっ!」 背後からキリヤに羽交い締めにされて、男と距離を取らされた。 「キリヤ、離せよっ! 俺は…俺のルースを傷付けたお前を絶対に、絶対に許さないっ!」 俺の悲痛な声が広場に響いた。

ともだちにシェアしよう!