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激震(6)

「ドリナ先生、皆さん、ありがとうございましたっ!」 俺は、ぐいっと袖で涙を拭うと立ち上がり、深く一礼してルースの枕元に駆け寄った。 「ルースっ!」 呼び掛けても目覚めないルースの手を握り、精一杯話し掛ける。 「ルース、俺を庇ってくれて助けてくれてありがとう。 ドリナ先生達がルースを助けてくれたんだよ。 この始末は、俺が…俺がやる。」 最後は心の中で呟いた。 俺の中に、ある決意が生まれていた。 ルースの手を握ったまま、ドリナ先生達の方を向いた。 「ドリナ先生、皆さんにお願いがあります。 俺に協力していただけませんか?」 その頃、伝令を受けた城内は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなっていた。 次々と知らされる情報に、ガルーダですら正気を失いかねない状態だった。 「急ぎイスナに使いを!」 「ガルーダ殿!」 筆頭大臣のエスティラが、銀の髪を靡かせてやって来た。 「あぁ、エスティラ殿!丁度今お伺いしようと算段しておりました。 こちらから伺わねばならぬのに、わざわざ御足労ありがとうございます。」 「いいや…しかし、大変なことになりましたな…ご無事であれば良いのですが… 万が一国王に何かあれば…義弟ラジェ様を代わりに立てねばならなくなるのですが……」 「縁起でもないことを! ルース様は大丈夫です、絶対に!」 「私もそう願いたい。 ですが、ご容態は余り芳しくないご様子。 我々としては最悪の事態も考えておかねばなりません。 私に代理権限があるので、国政に関しては当面お任せいただきたい。 …ところで、ガルーダ殿。」 エスティラは声を(ひそ)めた。 「はい。」 「俄かに、きな臭い噂が蔓延(はびこ)っているのをご存知か?」 「きな臭い噂?」 「ルース様危篤の一報を聞いたラジェ様が『これでよし』と仰って祝杯をあげた、そうです。」 「何ですって!?」 「ラジェ様お付きの侍従がそう申しているから、単なる噂ではない、と私は思っています。 今回の襲撃は裏で糸を引く者がいる…まさかとは思うが、霙様がラジェ様と密通して、ルース様を亡き者に」

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