87 / 191
再び、イスナにて(1)
「ルースっ!ちゃんと寝てなきゃダメじゃないかっ!
何で起きてるんだよっ!
早くこっち来て!!」
今日も霙に叱られて、書きかけの書類を慌てて片付けるとルースは大きな背中を丸めながらベッドへと戻った。
「目を離すとすぐこれなんだから…ルース、いい加減にしないと、俺」
「分かってる。分かってるよ、霙。
でも、もう俺は大丈夫だから。」
「何言ってんの!?あの世に行きかけたんだよ!?
…一体どれだけ俺が心配したと思ってんの……
ルースのばかっ!」
「霙、悪かった。すまない。ごめんなさい。
大人しく寝てるから、許して?」
そっと霙を抱きしめると、暴れればルースの怪我に障ると思ったのか、霙は大人しく身を任せてきた。
頭を撫で頬や鼻先、顔中にキスの雨を降らせると、その頃にはもう霙の顔は真っ赤になり、潤んだ瞳でルースを見つめている。
「霙、許してくれるか?」
「……………」
「霙、返事して。愛してるから。」
「……………」
繰り返されるキスと睦言。
(愛情を与えられたばかりの野良猫のようだな)
そんな霙がかわいらしくて、ルースはワザと霙に心配を掛けるような行動をしてしまっている。
霙は、心底ルースの身体を心配して叱りつけてはルースの思惑通りの反応をして、罠にまんまと引っ掛かるのだ。
側から見れば、単なるイチャつき。
ルースの回復を知る極く僅かな者達も次第にそれに慣れて、口元が綻ぶのを慌てて引き締めながら、によによと見守るのだった。
「おーい、ルース、起きてるか!?……ってか、お前らまたイチャついてんのか!?
はぁ、若いっていいねぇ……」
ノックもせずに無遠慮に入ってきたのはキリヤ。
ルースの腕の中から飛び逃げる霙。
「こら、霙、逃げるな!
これが俺達の普通の状態なんだ。
…キリヤ、笑うな!何か文句あるか?」
「いいや、別に。」
「何か用事があったんじゃないのか?」
「あぁ、そうだった!
龍の国は、お前が危篤だと、大騒ぎになってるぜ。」
ともだちにシェアしよう!