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再び、イスナにて(2)

「あぁ、黒幕を炙り出すためにやった、と霙から聞いてる。 ガルーダにも伝えてあるらしいし。 で?上手くいってるのか?」 「城内外は大混乱さ。面白いことが起こってるぞ。 アンタの義弟ラジェは、戴冠式の服の準備を嬉々として始めてるそうだぜ。 現国王は、こうして元気にまだ生きてるのにな。もう自分が王位を継ぐ気になってる。 段々と尻尾を出し始めてるぞ。 彼方此方で噂になってる。 そのうちもっと何かしでかすぜ。見ものだな。」 「そうか……それでグルディの方はどうだ?」 「それが中々。あの古狸はそう簡単にはいかねぇな。 でも、そこが狙い目さ。綻びは必ず生まれる。 もう暫く泳がせておく。 俺の部下がしっかりと目を光らせているから安心しな。」 「そうか…お前の部下なら間違いないだろ。 では、もう暫く俺は『危篤』で過ごすとするか。 …霙?……霙が何処かに行ってしまったじゃないか! おい、キリヤ!お前が突然乱入してくるから…」 「真っ昼間っからイチャつくお前達が悪いんだろ? サッサと方を付けて自分の城に帰れよ! …血の繋がった義弟(おとうと)と信頼すべき神官の裏切りか……処分するにしても大変だな。 ところで傷はどうなんだ?まだ痛むのか?」 「もう塞がってる。大丈夫だ。心配掛けて悪かった。 はどうしてるんだ?相変わらずダンマリを決め込んでいるのか?」 「明日の朝一番で、奴の母親が秘密裏に到着する。 命を落とした筈の息子が生きていてとなっていることに、酷くショックを受けていたそうだ。 それでも親は親。息子の為に必死でこのイスナまで足を運んでくる。 母親を見れば、奴の心も動くだろう。 それでもダメならまた次の手を考えねばならん。あれがダメならこっち、こっちがダメならそっち。 色々と打つ手はある。」

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