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炙り出し(1)
ガルーダはエルグから、ルースの暴走とそれを身を挺して止め床に臥している霙の様子を驚きを持って聞いていた。
大きく息を吐いたガルーダは
「ルース様には余りにも衝撃的な内容であったから、お伝えするのに十分配慮を、と申していたのに…
それにしても霙様がご一緒で良かった。そうでなければ、今頃ルース様は……そう考えただけでゾッとする。」
「私の不徳の致すところ。申し訳ありませんでした。私も肝が冷えました。
あれこれ説明するよりも、事実だけを事務的にお伝えした方が良いと判断したのは、全くもって浅はかでした。
霙様が咄嗟にルース様を抱きしめて…強く結ばれた番というのは、かくあるのかと…
幸いにも霙様も順調にご回復のご様子。
お二方とも2、3日うちには床上げができるかと、ドリナ先生も仰っていました。」
「ご無事で本当に良かった。
次からは十分考慮してお伝えするように。
二度とあってはならぬこと。
仲睦まじくお過ごしならばそれで良いのだ。
ところで、あのタールファという男はどうしているのか?」
「全てを包み隠さず証言して認め、昨日北の塔へ輸送されました。
ただ…物的な証拠がないので、それだけで黒幕を捕まえることもできず、歯痒い思いをしています。
けれど、今までの事件をひとつひとつ丁寧に洗い返しているので、その積み重ねが何かヒントになるかと…」
「こちらもエスティラ殿が集めた情報を検証している。
年月の経った事件もあるのだが、それらももう一度関係者に当たっている。
…エルグ、そろそろ罠を仕掛けようと思うのだが、協力してくれるか?
誤解のないように、あらかじめルース様と霙様のお耳には入れておきたい。」
「勿論!私は何をすれば?」
「ラジェ様の臣下に入れ。」
「は!?今、何と!?」
「聞いてなかったのか?
『ラジェ様の臣下に入れ』
そう申したのだが?」
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