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炙り出し(13)
瞳を潤ませたサリーナは、それでもその奥にある光を宿したまま、しっかりとした口調で話し始めた。
「…エルグ様…私は…私は、サリーナ・イーグナーという名ではありません。
本当の名前は…アルティナ・バールド…私がまだ幼い頃、謀反の濡れ衣を着せられて失脚した、前神官タルサ・バールドのひとり娘です。
『私の両親』だと、あなたがお会いになったのは、育ての親で父の旧友です。
あの事件の折、父は無実を訴えたものの偽装された動かぬ証拠を突き付けられて北の塔へ。そしてそのまま帰らぬ人となりました。
母はショックの余り精神を病み、後を追うように亡くなりました。
残された私を今の両親が不憫に思いこっそりと引き取り、我が子のように愛情を注いで育ててくれました。
…物心ついた頃に、本当の犯人はグルディだと知りました。
自らが神官長になりたいがために、父を陥れて成り代わったのです。
復讐を誓った私は、裏でグルディとラジェ様が繋がっているという噂を聞き、ラジェ様なら落としやすいと判断して侍従となり、これまで証拠を集めてきました。
この度のルース様と霙様への襲撃も、彼らが裏で糸を引いています。
ここ最近、人目を偲んで頻繁にグルディの配下の者がラジェ様を訪ねてきているのは、ラジェ様が暴走しないように見張っている…そう思えてなりません。
私はこの龍の国が大好きです。
このままラジェ様とグルディの好きにさせたくはない。
エルグ様、私の集めた証拠を全て差し上げます。
エルグ様……
私はあなたに愛していただく価値のない、そんな女です。
優しくして下さり、そしてあの場所から私だけでなく他の侍従達も助けて下さったこと、一生忘れません。
ほんの僅かな時間でも、私にとっては夢のような幸せなひと時でした。
あなたが掛けて下さった言葉で、私は一生生きていけます。
本当に、本当にありがとうございました…」
サリーナ、いやアルティナは気丈にも一気にそこまで話し終えると、それまで耐えていたものがふつりと切れたのか、ぽろぽろと涙を零した。
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