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炙り出し(15)
「何でそんな無茶を!誰がそう命じた!?
俺は大切な臣下を危険な目に遭わせたくはないっ!
ガルーダは何を考えて我が息子にそんなことをっ!!!
万が一にでもバレたら……どうするんだ!?
何かあってからでは遅い!アイツらはひとの命など虫ケラ以下にしか思ってないんだぞ!?」
密やかに面会したグリスが、ガルーダやエルグ達が仕掛けた罠について説明をした途端、ルースの怒りが爆発した。
ルースの怒号の前に、流石のグリスも大きな体躯を縮こまらせ項垂れていた。
伝え方を間違えたか?
いや、一字一句違わぬように、とエルグ にも言われた通りにお伝えしたはずだが……
怒りを止めようともしないルースを霙が必死で止めている。
「ルース、そんなに怒鳴りつけていたらグリスも説明できないよ!
ね、グリス!?
ルース、一旦落ち着こう、ね!?
ほら、ルース。よしよし。
ね、いい子だから…ね、はい、深呼吸して…
それにしてもどうしてそんな無茶を……」
霙は、今にもグリスに飛びかからん勢いのルースの腕を掴み背中を撫で、猛った馬を宥めるように、極めて優しい声を掛けている。
暫くしてやっと落ち着きを取り戻したルースは、自分の腕に全力で縋り付く霙の唇にキスを落とし「もう大丈夫だ」と囁いた。
霙は、人前でされたキスとルースが落ち着いた安堵から、その場にへたり込みそうになったが、すぐさまルースに抱き込まれた。
「…グリス、最初から順を追って説明してくれ。」
霙を抱きしめたまま、氷のように冷たい口調で命令するルースに若干怯えつつも、グリスはそのように至った経緯を事細かに話し始めた。
「…エルグはどうやら“ミイラ取りがミイラになった”ようで…サリーナという元侍従長と本当に懇ろになっておりまして、これは我々にとって誤算ではあるのですが…」
グリスはため息をついた。
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