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炙り出し(16)
「ただ、ガルーダ が調べたところ、彼女もグルディに家庭を壊されていて、復讐のためにラジェ様の元に仕えていたそうです。
彼女が独自で長年集めた数々の証拠はエルグからガルーダ へと渡されております。
ですから、我々の味方であると判断しても良いが、今暫く油断しないようにと…」
「ひとの恋路はどうにもならんからな…
そうか、女の身でありながら復讐のために火中に飛び込むとは、中々の豪胆な性格と見える。
あのエルグには似合いかもしれんな…そうか、これが落ち着いたら祝いの品を届けてやらねば。
それで?
エルグはラジェの元に下ったのであろう?
理不尽な扱いをされていなければ良いが…」
「それはご心配なく。
世間では色々と噂されているようですが…本人は至って冷静で職務を全うしています。
淡々と奴らを追い詰めるチャンスを狙っていますよ。」
「思いっ切り動けぬことが恨めしいぞ。
だが、今俺が動けばせっかくの罠が泡と消える。それにエルグの命にも関わる。
不本意だがガルーダ達の策に乗るとしよう。」
「御意。
繋ぎは我々が命を賭けてさせていただきます。」
「はぁ…全くお前達は…簡単に『命を賭ける』と言うな。
どれも大切な唯一無二のものだ。
そう簡単に言葉に出すな。
ガルーダの影響か!?」
グリスがどう答えてよいやら戸惑っていると、霙が突然口を開いた。
「俺もっ!!俺にも何かできることはない?
何か役に立つことはないんだろうか…ねぇ、グリス、ガルーダに聞いてみてよ!」
「霙!何を言い出すんだ!?
お前はついこの間、命を狙われたばかりだぞ!?
頼むからここで大人しくしておいてくれ!
…これ以上、心配させるな…」
「…ごめん、ルース…分かった。
大人しくしてる……」
今にも熱い抱擁が始まりそうで、グリスは慌てて暇乞いをした。
しかし、あの霙の性格では、このまま大人しく引き下がるか…一抹の不安を抱えたグリスなのであった。
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