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炙り出し(17)
ほぼ普通の生活ができるまでに回復したルースに毎日甘やかされ、霙は幸せを感じていたが、龍の国で孤軍奮闘するエルグのことが気になって仕方がなかった。
そしてそれを親であるガルーダがどんな思いで見守っているのか、その気持ちを考えたら居ても立っても居られない。
「俺ができることって何だろう…」
幸せボケした頭をフル回転させる。
…ひとつの結論が閃いた。
「そうだ!囮になればいいんだ!」
意気揚々と計画を練り、ルースのいない隙を狙ってフォルダに打ち明けた。
「なっ!?霙様、なりませんっ!
そんなことをすれば、私の首がすっ飛びます!
いや、その前に焼き尽くされて灰になります!」
「だって、ガルーダやエルグだって酷いこと言われても淡々と頑張ってるんだよ!?
こんな時にルースの番の俺が頑張らなきゃどうするの!?
フォルダ、さっさと奴らを捕まえないと!」
「お気持ちは分かりますが、絶対に、絶対に、ぜーーーーーったいに、なりません!」
「…分かった。もう、いいよ。分かったから。
ねぇ、フォルダ、これ美味しいから食べてみて。」
霙の、いつもと変わらない様子に、フォルダは安堵のため息をついた。
良かった、諦めて下さった……
そう思ったフォルダが浅はかだった。
その日のうちに、霙の姿が忽然と消えた。
さぁ、イスナは大騒ぎになった。
「フォルダ、何故止めなかったぁーっ!」
ルースの怒りの矛先がフォルダに向く。
「お止めしましたっ!
『もういいよ、分かったから』と仰って、諦めた風だったので…申し訳ございませんっ!」
「一度ならず二度までも…あの、馬鹿猫っ!
どれだけ俺を心配させれば気が済むのだっ!
霙の計画を洗いざらい申せっ!」
フォルダは必死で記憶を辿り、霙の計画の一部始終を伝えた。
それを聞いたルースはため息をついた。
「こうなったら乗り込むしかないな…全く、あの馬鹿猫は何やってるんだ。
仕掛けた罠の邪魔をするなと、あれ程申し伝えておいたのに…」
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