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炙り出し(18)
フォルダは全速力で城へと向かっていた。
道中最善の注意を払い、闇に紛れた黒龍インティラの姿を探しながらの飛行だったが、その姿を見つけることはできなかった。
思った通り、ルースの怒りは半端ないものだったけれど、一刻を争う状況を聡い王は分かっており、それは一瞬で終わった。
「ルース様、『馬鹿猫』って2回も仰ってたな。」
あの時、思わず吹き出しそうになったが、必死で堪えた。
ルース様に見つかっていたら……俺は今、ここにいなかったかもしれない。
それにしても、灰にならなくて良かった…五体満足の身体を確認した時、情けないが不覚にも泣きそうになった。
助かった。命があった、とホッとした。
フォルダは改めて安堵のため息をつき、ひらすらにガルーダの元へ急ぐ。
霙様はインティラと行動を共にしている。それは間違いない。
現にインティラは、急遽休暇を願い出てその後イスナから姿を消してしまっている。
2人が真剣に話し込む姿を見た者もいた。
何故にインティラは、ほいほいと霙様の命令に従ったのか。
霙様がインティラを選んだ理由は何だろう。
霙が城へ行く“足”として選んだのは、フォルダの部下のインティラ。
一際正義感が強く、人懐っこい性格の彼は仲間からも慕われていて、霙ともすぐに仲良くなっていた。
インティラは“自分のために”、というより、自分以外の“誰かのために”動く。
そしてそれは、ピンポイントで良い結果を生むのだ。
「はぁ……真っ直ぐなインティラの性格を見越しての龍選 なら、霙様も中々のお人だ。
まさかルース様のことも話されたのだろうか。
とにかく。
霙様を城にお連れして、ガルーダ様にお目にかからねば。」
フォルダは目を凝らしながらも、なお一層翼を羽ばたかせスピードを上げた。
密やかに城に着くと、息を整え真っ先にガルーダの元へ。
「ガルーダ様っ、フォルダでございますっ。」
「フォルダ!ルース様に何かあったのか!?
…まさか、また襲われた!?」
「いいえ!
霙様が行方知れずになりました!
途中、目を凝らしながら飛んできましたが、見つけることができませんでした。
しかし、こちらに向かっているものと思われます!」
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