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炙り出し(20)
その頃、インティラの手に包まれた霙は城を目指していた。
「霙様、寒くないですか?」
「これくらい平気だよ。毛布もあるし。
それよりインティラ、こんなことに巻き込んだ上に急に頼んでごめんね。」
「霙様の頼みとあれば!
それに我が龍の国の一大事なんですよ!?
…でも、ルース様に黙ってなんて、後でどんなお叱りを受けるか…」
「俺が勝手にやったことだから、インティラには関係ないからね!
ルースが何か言ってきても俺が絶対に庇うから!」
「…霙様…少しスピードを上げますよ。しっかり掴まっていて下さい!
…あれ?あれは……まさか…」
「インティラ、どうしたの?」
「まさか、あれは…フォルダ隊長!?」
前方から、青い光の玉が物凄い勢いでこちらに向かってくる。
「あちゃぁーっ、霙様、フォルダ隊長に見つかってしまいました…何で隊長が……
マズいです。
もうロックオンされてるから逃げられません…
はぁ…」
がっくりと項垂れたインティラは、上げかけた速度を落とした。
そして、ゆっくりと羽ばたきの回数を減らしていくと、少し広い地面を目指して降り立った。
それに遅れること数秒後、青い光の球が輝きを失うと同時に、目を釣り上げたフォルダがこちらにやって来た。
「霙様っ!
ガルーダ様やエルグ様の命を賭けた計画を全て無駄にするおつもりかっ!
あなたの思いつきで振り回される者達のこともお考え下さいっ!
インティラ!お前も何故お止めしないっ!」
「ひっ」
「うっ」
憤怒の形相のフォルダに怒鳴られて、霙もインティラも震え上がった。
いつも大人しいひと程、怒らせたら怖い。
2人は目を見開いたまま、硬直していた。
やがて、ふぅ、と大きく息を吐いたフォルダは
「…:怒鳴って申し訳ありませんでした。
しかし霙様。この度のことは余りにも無鉄砲過ぎます。
ルース様からも散々聞かされていたでしょう?
あなたが心配されるお気持ちも分かりますが、もっと部下を信じて下さい。
とにかく、このままガルーダ様の元へご案内します。」
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