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炙り出し(23)

霙はその言葉に息を飲んだ。 「あっ……」 「賢明なあなたならお分かりでしょう? それが分かったなら、どうか私達がすることを黙って見守っていて下さい。 必ずや良い結果になります。 見ているのもお辛いのでしょうが…」 ガルーダは、子供にするようにずっと霙の背中を優しく摩りながら語り掛ける。 霙は反論できなかった。 良かれと思ってしたことが、龍の国どころかイスナまでも巻き込んで、大騒動になるところだった。 いや、もうなっていたのだ。 以前も自分の感情のコントロールができなくて城を飛び出し、それこそ上を下への大騒ぎとなった。 喉元過ぎれば…で、そのことを忘れてしまっていた。 俺は何て学習能力のない奴なんだろう。 ガルーダやエルグだけでなく、1番守りたいルースを危険に晒すことになるなんて、思いもしなかった。 自分が動くことで絶対に解決するなんて、思い上がりも甚だしい。 俺は馬鹿だ。大馬鹿だ。 「…ガルーダ、ごめんなさい。」 「お分かりいただければよいのです。 空を駆けてお疲れだしお腹も空いてるでしょう? 今、あなたがここにいることを悟られてはなりませんので、霙様のお部屋にはご案内できず私の所で申し訳ないのですが、ゆっくりとお湯に浸かって、食事をどうぞ。 さ、こちらへ。」 ガルーダに案内されるがまま、甘えて湯船に浸かった。 冷えた身体にじわりと温もりが戻ってくる。 浅はかな俺。 迷惑掛けてばかりの俺。 俺が動けば解決するなんて、図々しいにも程がある。 そんなドラマみたいなことなんてある訳ないんだ。 逆にみんなを巻き込んで心配させて騒動を引き起こしている。 情けなくなって涙が零れ落ちる。 今の俺にできることは…祈りながら静観すること。 ルースにまた一杯謝らなくちゃ。 『ごめんね』と『愛してる』のキスを添えて。 霙は思う存分涙を流すと、しっかりと前を向いた。

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