120 / 191

炙り出し(24)

「なりませんっ!ルース様っ、お鎮まり下さいっ!」 「これをどう鎮まれと!? 霙に何かあったらどうするんだ!? 俺はもう、あんな思いをするのは嫌だっ!」 「お気持ちはお察しします! しかし、フォルダ様とキリヤ様が後を追っていますから! 傷に障ります、どうか、どうか!」 「こんな傷、もう何ともないっ! ええい、離せっ!」 ルースは金色の髪を振り乱し、渾身の力を込めて止めようとするハスイラを振り解こうとする。 そうはさせまいと、ハスイラも抵抗する。 イスナ1の怪力のこのハスイラをもってしても、ルースを完全に封じ込めることはできずに苦戦していた。 (何て馬鹿力なんだ。長くは持たないかもしれん…) ハスイラが不安の色を顔に浮かべたその時、キリヤが駆け込んできた。 「ルースっ!安心しろ!お妃さんはフォルダが確保してガルーダの元に連れて行った! 落ち着けっ!」 それを聞いたルースの動きが止まった。 「聞こえたか?お妃さんは無事だ!」 その場にへたり込むルースとハスイラ。 ハスイラは、拘束していた腕をゆっくりと解いていく。 腕の痙攣が止まらない。力を使い過ぎたのだろう、こんなことは初めてだ。 ハスイラはルースと少し距離を取ると、その場に控えた。 キリヤは座り込んだルースに近付くと、肩を叩き 「心配するのも痛い程分かる。 でも、人の上に立つ者は如何なる時にも冷静であらねばならん。 ハスイラ、ご苦労だったな。ありがとう。 お前でなければルースを止めることはできなかった。 コイツの馬鹿力も大したもんだろう?」 「はい、腕が痺れて震えていますよ。」 「ははっ。 イスナ1の怪力に勝るとも劣らぬとはな。 ルースも大したもんだ。 お妃さんは、インティラというお前の部下と城に向かっていたところをフォルダが確保した。 あとはガルーダが上手く諭してくれるはずだ。 さーて、ルース。 お妃さんが城に戻ったことで、あっちの計画も練り直さねばならなくなったのではないか?」

ともだちにシェアしよう!