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炙り出し(26)

「若い娘に何と無謀な…ハスイラ、お前は何という賭けを…」 「ルース様、私はあの子達を信じています。 それに、娘達だけではありません。 我々の仲間が城内のあらゆる所に忍び込んでいます。 イスナを助けて下さったルース様や霙様に恩返しがしたいと、自らが志願して行った者ばかりです。 ご心配なく。必ずやお役に立ちますよ。」 「キリヤ、ハスイラ…」 「そういうことだ。 俺達は、ガルーダとエルグに密に連絡を取っている。 あと少しだ。あと少し辛抱すれば、必ずアイツらを追い詰めることができる。 …お妃さんが余計なことをしなければ、な。 ま、今はガルーダがいるから問題ないだろう。」 「俺は…自分が情けない…動けぬ自分もそうだし、霙を止めることもできなかった。 キリヤ、ハスイラ。 本当に申し訳ない。感謝する。」 「ルース、止めろよー。頭を上げろって。 お妃さんと離れて心配だろうが、お前は今『危篤状態』なんだ。 頼むからベッドに横になっててくれ。 お前まで城に姿を現したら、それこそ大騒動になるからな。 お前にも逐一状況を伝える。 だから、慌てるな。落ち着け。」 キリヤは揶揄い半分、真面目さ半分で言った。 ルースは居住まいを正すと、2人に丁寧に頭を下げた。 「迷惑を掛けるが、もうここまできたら、お前達の力を借りるしか術はない。 頼む。龍の国を助けてくれ!頼む…」 キリヤはルースの手を握りしめ、肩をバシバシ叩くと笑いながら言った。 「ルース、結婚式には最前列に招待しろよな! そろそろ繋ぎの連絡が入ってくる頃だ。 お妃さんの様子も分かるはずだ。 ここに呼ぶから一緒に聞いてくれ。 待ってろ。」 キリヤがハスイラに合図をすると、音もなくハスイラが退出した。 「油断すれば必ず隙ができる。 現にラジェは、グルディの監視と警告を無視してやりたい放題だそうだ。 焦るグルディが仕掛けてくるのは時間の問題。 ルース、焦るな。勝機はもう手中にある。」 親友となった男の頼もしい言葉に、ルースはそっと目尻を拭いた。 その瞳にはもう迷いはなかった。

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