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潜入(1)

ハスイラの2人の娘は、器量も良い上に機智に富み頭も良かった。 そして何より、父親から手解きを受けた武術の腕前は並み居る男達も舌を巻く程。 妹のようにかわいがっているレイチェを始めイスナの人々が、霙によって救われたことに感激して、何とか役に立ちたいと思っていた。 「ねぇ、ルウルウ、お城に堂々と乗り込むにはどうしたらいいと思う?」 「私も考えてた! さっき父様が話してたのを盗み聞きしたんだけど…ラジェの侍従を探してるらしいわ。 それ、私達でどう?2人なら心強いわ!」 「いいわね!じゃあ早速……」 勿論父親であるハスイラに止められたが、そんなことで怯む娘達ではない。 この時ばかりは流石のハスイラも、子育ての仕方を間違えたと後悔した。 全てにおいて完璧な彼女達を採用しない訳もなく、正体と武芸の腕を隠しつつも正々堂々と真っ正面から城に乗り込んだルウルウとアシェナは、他の侍従達とラジェの側につくことになった。 その中には、あのユウスルの遠縁の娘、ナガールもいた。 最初から浮かぬ顔の彼女は、姐御肌の2人にすぐに懐き、何でも正直に打ち明けてきた。 「本当は凄く凄く嫌だったの。 私、結婚の約束をした大好きな人がいたのに無理矢理ここに連れてこられて… ラジェ様は横暴で品もなく王の器ではないと、密かに囁かれていたし。 でも、ユウスル叔父様から 『ナガールにラジェ様のお子を生ませろ! グルディ様の命令だ! そうすれば我ら末端の親族まで永遠に繁栄が約束されるのだから。』 って言われてその気になった両親に…」 ただでさえ、霙の命を狙ったのがグルディだと知ってその尻尾を掴むために乗り込んで来たのに、ナガールの涙が、正義感の強いルウルウとアシェナの怒りを倍増した。 「許せないっ!ナガール、そんなことに屈してはダメよ! …『グルディの命令』って言ったわよね…それって…」

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