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潜入(2)
しくしくと泣きながらも、ナガールが訴える。
「私、実はグルディ様とも遠縁関係に当たるの。
もし私がラジェ様のお子を生み、万が一ラジェ様に何かあれば、その子は傍流とはいえ王家の血筋を受け継ぐから、この龍の国の王になる。
そうなると然るべき人物がその幼子 に代わって摂政となり、この国を取り仕切らねばならない。
その座を狙っているのが…グルディ様なの。」
いきなりの核心に触れて、ルウルウもアシェナも息を飲み、顔を見合わせた。
大きく深呼吸したアシェナが
「ナガール…あなた、あんな奴の子供を生みたいって思ってる?」
ナガールはアシェナをキッと睨み付けると
「…そんなこと…例え命を落としても嫌っ!
私には、私には…将来を誓ったひとがいるの!
こんな所から早く逃げ出したいっ!
綺麗な身体で…あのひとの元へ帰りたいっ…」
最後は絞り出すように吐き出すと、ナガールは本格的に泣き出してしまった。
アシェナに縋り付いて肩を震わせて泣くナガールを抱きしめ、アシェナはルウルウと頷き合った。
ナガールが嘘をついているとは思えない。
許せない。絶対に許せない。
私利私欲のためにこんな娘 まで利用するなんて。
ルウルウが何かをしたためて、そっと部屋を出て行った。
行き先は、洗濯場。
さり気なくひとりの年配の女性に近付くと、その手に紙を渡した。
その女性は炊事場の配膳係の男へ。
男は食事を取りに来た門番へ。
門番は行商を終えて城外へ出て行く男へ。
手から手へ次々と渡っていった紙切れは、数時間後キリヤの手元にあった。
「…やはり動き出したか…ハスイラ、流石お前の娘達は凄腕だな。
そのナガールという娘が鍵だ。
無理矢理別れさせられた恋人という男とコンタクトは取れるのか?」
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