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潜入(3)
ハスイラは頭を掻きながら、面映い表情で言った。
「ええ。ご存知の通り、この私よりも豪胆で。
ナガールは、ルウルウとアシェナに心を許して、知っていることを全て教えてくれたそうです。
相手の男の元へは、密かにシンドラが向かっています。一旦、イスナに連れて来るように伝えています。
ルウルウは、侍従達がラジェに手を出されぬように、ラジェにこっそりと睡眠薬を飲ませているとのこと。
今はまだ皆無事です。万が一手を出されそうになっても、ルウルウとアシェナがいるので大丈夫ですよ。」
「そうか、抜かりないな。
ところで睡眠薬とは?一体何処から?」
「ドリナ先生ですよ。
ルウルウ達の計画をお知りになって、あんな奴に触れられることがないようにと、準備して持たせて下さったのです。」
「じーちゃん先生、やるな。後でお礼を言っておこう。
あちこちで協力してくれるひとがいる。
ハスイラ、もう少しで一網打尽だ。
お前も娘のことが心配だろうが、辛抱してくれ。」
「心配いりませんよ。
私の自慢の娘です。もし何かあれば、その時は例え皇太子と言えど命の保証はしません。」
その言葉にキリヤは大きく頷くと、ハスイラと、伝令役の男を伴ってルースの部屋に向かった。
ルウルウからの報告より先に、伝令役のツェンが霙の様子を報告しに帰ってきていたのだった。
「ルース、入るぞ。」
ルースは大人しくベッドに横になっていた。
「そのままでいいから聞いてくれ。
ツェン、見聞きしたこと、ガルーダからの伝言を頼む。」
「申し上げます。
霙様はお変わりなく元気。
勝手な行動をしたことを猛省されているご様子。
このままガルーダ様がしっかりと預かります、とのこと。
ラジェ様の侍従が一新。
ハスイラの娘からの伝令はキリヤ様からお聞き下さい。
城内外を勝手気ままに振る舞う様子に、龍の国の行く末を案ずる者が出てきており、グルディがそれに便乗しようとする動きがあります。」
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