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潜入(4)

ルースは安堵のため息をついた。 「霙は無事か…良かった… ハスイラの娘達にも、油断をするなと伝えてくれ。 薬に頼るのにも限度がある。誰ぞ身近で娘達を守る者はいないのか?」 「ご心配なく。 ウーガとディルという夫婦が、侍従の世話役で常に行動を共にしております。 この者達も武芸の達人。 目を光らせております。」 「一体イスナの者達は、何人潜入しているんだ? …城内のセキュリティはどうなってるんだ…」 「ははっ、自分達が思っているよりも、節穴だらけだってことさ。 俺達にとっては、身分を偽り姿を変えることなんぞ朝飯前。 あんたの大事なお妃さんが、ちゃんと大人しくしてるかどうかも逐一報告が入るぞ。 安心しろ。」 「安心していいのか悪いのか…」 「それよりも、そろそろグルディが痺れを切らして動き出すぞ。 ナガールという遠縁の娘を侍従に送り込んでラジェの子を生ませようとしているが、上手くいかない。 そのナガールには恋人がいて、今このイスナに向かっている。その男にも協力を頼んでいる。 ナガールは 『傍流でも王家の血を引く子を生んで、その子が王になる。 幼児には摂政が必要。その地位をグルディが狙っている』 と言ったそうだ。 他の侍従も嫌々差し出された者ばかりで、ルウルウ達に協力している。 暴走するラジェと、それを見限ったグルディ。 どっちが先に動くか… グルディの館にも手下達が潜り込んでる。 何かあればすぐに繋ぎが来る。」 「キリヤ…お前、どれだけの人数を動かしているんだ? どうしてそこまで…」 「言っただろ?イスナはあんたとお妃さんに救われたと。 俺達は義理堅いんだよ。 それに、お妃さんの役に立てると、皆んなウズウズしてるんだ。 あのひとは偏見なく俺達の懐に飛び込んで、みんなを虜にしちまったからな。」 キリヤはそう言ってウインクすると、高らかに笑った。

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