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潜入(5)

イスナを飛び出した霙を無事確保したガルーダは、久し振りにあれこれと霙の世話を焼いた。 そして、風呂と食事を終え泥のように眠った霙の頭を愛おしげに撫でると、ガルーダは音を立てずにそっとドアを閉めた。 あ、この香りは… 心をときめかせ急いで寝室に入ると、愛する夫が両手を広げて待っていた。 「ただいま、ガルーダ。」 その胸に吸い寄せられるように飛び込むと、固く抱きしめ合う。 「お帰りなさい、ナルジ。 知らせてくれれば迎えの準備をしておいたのに…」 「ははっ、そんな暇もなく飛んで帰ってきたんだ。早く我が(つま)を補充させろ。 …ガルーダ、少し痩せたか?」 「…大丈夫。今、霙様が隣の部屋に…」 「あぁ、さっきフォルダから聞いた。 しかしまぁ、歴代に名を馳せるやんちゃなお妃様だな。 北の塔にも逐一情報が流れてくる。 龍の国を守れるかどうかは我々の腕にかかっている。 ガルーダ、今暫く気を許すな。」 こくこくと頷くガルーダは、目を閉じたまますっぽりと夫ナルジに包まれていた。 ナルジは大きな手で、ガルーダの頭や背中をそっと撫でてくれている。 強張っていた肩の力が段々と抜けていく。 どうやら、自分が思っていたよりも気を張り巡らせていたようだ。 こうしてナルジに包まれていれば、何があっても耐えていける。 北の塔の最高管理者としての重責を負い、1年の間に数える程しか会えない愛する夫。 でも激務の合間を縫って、こうして戻ってきてくれる。 子供が成長してからはお互いに責任のある仕事を担い、益々自由になる時間が減った。 ましてや今は龍の国の一大事。 恐らく心配して駆け付けてくれたのだろう。 「…ナルジ、いつまでここに?」 「明後日の夕刻には出立する。 だから、それまでは…」 いつの間にかベッドに押し倒され、上半身が露わになっていた。 「ナルジ、隣に霙様がっ」 「ずっと口を塞いでおいてやる。 ガルーダ、愛してるよ。」 ナルジはガルーダに口付けた。

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