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潜入(7)

「ガルーダ……眠りに落ちたか…」 ナルジは、慣れた手つきで自分とガルーダの身体を手早く綺麗に清めると、その華奢な身体を抱き込んだ。 愛おしさが溢れ出し、剛健な男は思わず泣きそうになりごしごしと目を拭った。 そして、静かな寝息を立てる(つま)に優しく口付けると、ゆっくりと髪の毛を梳いた。 こうして抱き合えば、会えない時間が巻き戻され、心も身体も満たされていく。 若き頃、聡明で美しく優しいガルーダに一目惚れをして、何度断られても押して押して押して押しまくり、遂に我がものにした。 「何故俺を選んでくれたのだ?」と聞くと、ガルーダはさも面白そうに微笑みながらこう答えた。 「お会いした初めから、あなたが番だと分かっていましたし……追い払っても尻尾を振って甘える子犬のように見えてきて…情が移ったみたいです。」 言い寄るイケメン達をあっさりと振り、自分のような無骨な男を心から愛してくれ、周囲からは『美男と野獣』と揶揄された。 常に内助の功でナルジを助け、2人の息子を立派に育て上げ、家庭を守りつつもこの龍の国のために尽くしてきたガルーダ。 彼が心から愛する美しい龍の国が、不埒な輩共に汚されようとしている。 そんなことはさせない。 この身、この魂を賭けても、必ず守ってみせる。 「…ん…ナルジ…」 「ここにいる。」 「よかった…ナルジ…ずっと一緒に…」 ガルーダは、ふにゃ、と子供のような笑顔を見せると、ナルジの胸に数度頬を擦り付け、満足したようにまた寝息を立て始めた。 「幾つになっても、そうやってまた俺を翻弄するのか…」 狂おしい程の愛情に満たされたナルジは、おそらく激務と心労で痩せてしまったガルーダを抱き直すと 「未来永劫ずっと一緒だ。」 と囁いて、ガルーダの匂いを胸一杯に吸い込むと、ゆっくりと目を閉じた。

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