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潜入(8)

翌朝、見慣れぬ強面の大男がいて、霙は思わず大声を上げそうになった。 もしその横に笑顔でぴったりと寄り添うガルーダがいなければ、きっと城内に響き渡る声でそうしていただろう。 男はその大きな身体を縮めて、申し訳なさそうに言った。 「霙様、驚かせて申し訳ありません。 お初にお目にかかります。ガルーダの夫のナルジと申します。 ただ今は北の塔の管理を任されております。 何卒お見知りおきを。」 「…いえ、ごめんなさい!こちらこそ、よろしくお願いします…北の塔って…」 「はい、龍の国の地の果て。流刑の場。 そこで罪人の面倒をみているのです。」 「前にガルーダが地図で教えてくれた所だよね!?そんな遠くからせっかくお休みで帰ってこられたのでしょう!? ごめんなさい、俺がいて邪魔しちゃってて…」 「いえ、休暇ではなく用事があって戻ってきただけですから、お気遣いなく。 それより霙様、お身体は大丈夫なのですか?」 「はい、俺は全然。」 「それは何より。 ガルーダ、出掛けてくる。夕刻には帰るから。 霙様、狭いですがご自分の家だとお思いになって、お寛ぎ下さい。 では、後程。」 「ありがとうございます。」 「霙様、少し失礼致します。」 ガルーダがナルジの後を追い掛けて席を外した。 はぁ…吃驚した…あのひとがガルーダの旦那様なのか。 いつまでもラブラブって感じだったな。 いつも優しいけど、ガルーダがあんな顔をするなんて。 本当にナルジのことを愛してるんだね。 ルースと俺も、年を重ねたらあんな夫夫になれるんだろうか。 ルース…会いたいな……また勝手なことをした、って怒ってるだろうな。 ギュッとしてキス、してほしい… 思いを馳せていると、ガルーダが戻ってきた。 「霙様、吃驚させて申し訳ありませんでした。」 ガルーダはくすくす笑いながら食事の支度を始めた。

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