130 / 191
潜入(8)
翌朝、見慣れぬ強面の大男がいて、霙は思わず大声を上げそうになった。
もしその横に笑顔でぴったりと寄り添うガルーダがいなければ、きっと城内に響き渡る声でそうしていただろう。
男はその大きな身体を縮めて、申し訳なさそうに言った。
「霙様、驚かせて申し訳ありません。
お初にお目にかかります。ガルーダの夫のナルジと申します。
ただ今は北の塔の管理を任されております。
何卒お見知りおきを。」
「…いえ、ごめんなさい!こちらこそ、よろしくお願いします…北の塔って…」
「はい、龍の国の地の果て。流刑の場。
そこで罪人の面倒をみているのです。」
「前にガルーダが地図で教えてくれた所だよね!?そんな遠くからせっかくお休みで帰ってこられたのでしょう!?
ごめんなさい、俺がいて邪魔しちゃってて…」
「いえ、休暇ではなく用事があって戻ってきただけですから、お気遣いなく。
それより霙様、お身体は大丈夫なのですか?」
「はい、俺は全然。」
「それは何より。
ガルーダ、出掛けてくる。夕刻には帰るから。
霙様、狭いですがご自分の家だとお思いになって、お寛ぎ下さい。
では、後程。」
「ありがとうございます。」
「霙様、少し失礼致します。」
ガルーダがナルジの後を追い掛けて席を外した。
はぁ…吃驚した…あのひとがガルーダの旦那様なのか。
いつまでもラブラブって感じだったな。
いつも優しいけど、ガルーダがあんな顔をするなんて。
本当にナルジのことを愛してるんだね。
ルースと俺も、年を重ねたらあんな夫夫になれるんだろうか。
ルース…会いたいな……また勝手なことをした、って怒ってるだろうな。
ギュッとしてキス、してほしい…
思いを馳せていると、ガルーダが戻ってきた。
「霙様、吃驚させて申し訳ありませんでした。」
ガルーダはくすくす笑いながら食事の支度を始めた。
ともだちにシェアしよう!