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潜入(9)

「ガルーダ、ごめんね。」 ガルーダは手を止めて、首を傾げて言った。 「霙様?謝罪なさるようなことは、私はされていませんよ?」 「だって…せっかくご主人が帰ってきたのに俺がいて…数カ月振りなんでしょ?……邪魔しちゃって、ごめんね。」 大きく目を見開いた後、くすくすと笑ったガルーダは 「そんなこと…くすくすっ…大丈夫ですよ。いつもこうですから、お気になさらずに。 他所(よそ)のご夫夫とは違う、私達には私達なりの時間の進み方がありますから。 それより霙様、ルース様からご伝言です。 『頼むからガルーダの言うことをよく聞いて大人しくしていてくれ。 やんちゃ猫、愛してるよ。』 だそうです。 ふふっ、離れていても心は繋がっている。 霙様、そうですよね?」 「…ルースのやつ…そんなことワザワザ伝言してくるなんて…」 「さ、今朝は“おにぎりとみそしる”ですよ。 たくさん召し上がれ。」 悔しいけれど、嬉しかった。 遠く離れていても心が繋がっている。 そう思ったら胸がふんわりと温かくなった。 甲斐甲斐しく自分の世話を焼くガルーダを見ていると、きっとガルーダもこんな気持ちなんだろうなと、離れて深まる絆に思いを馳せていた。 お腹も一杯、体力も戻った。 でも、一歩も出歩けない。イスナに帰ることもできない。 俺がここにいることは、限られたひと達しか知らない。勝手に出歩けば大変なことになる。 うーん、困った、何をしよう。 そんな俺の様子を見ていたガルーダが 「霙様、もう一度龍の国について学んでみませんか? こちらに来られた頃は気持ちの整理もできてなくて、殆ど頭に残っていらっしゃらないのでは?」 「そう言われたら…そうだ。 あの時、俺に見せてくれた本ある? ガルーダが忙しいのは分かってるから、聞きたいことがあればメモして纏めて後で聞くよ。」 「そう仰ると思って、準備してありますよ。」 ガルーダが指さした先には、数冊の本が置いてあった。

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