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潜入(10)
時間を持て余していた霙は、一心不乱に本を読み続けた。
元々本好きだった彼は、疑問に思ったこと、もっと知りたいことを次々に控えていきながら、用意された本だけでは足りず、更に数冊の本を運んでもらっていた。
霙がガルーダの部屋で一応静かに過ごしているその頃、ルウルウとナガールが2人っきりで話をしていた。
「……という訳で、あなたの恋人…サラエさんがこちらに向かってるの。」
「えっ!?サラエが!?嘘っ、本当に!?
あぁ、神様…神様って本当にいたのね…もう一度サラエに会えるなんて……
ルウルウ、あなた達って一体」
「しっ。詮索は不要。
奴等のターゲットはナガール、あなたよ。だから、あなたを守る人手が必要。それも信頼関係がないと。
サラエさんなら適任でしょ?
薬に頼るのも限界がある。怪しまれたらあなただけ別の館に連れて行かれてしまうかも。
そうなったら私達は手が出せなくなってしまうわ。
そうなる前に、決定的な証拠がほしいんだけど…何とかあの2人を仲違いさせて綻びを作らないと…」
「ルウルウ…私に何かできないかしら?」
「危険なことはできないわ。
サラエさんがこちらに来てから彼の話も聞きましょう。
それより、面白い噂が出ているの。」
「噂?」
「ええ。
『ラジェ様は子種がない』
って。どうやら噂の出所は、クビになった元乳母らしいの。その“らしい”ってのが怪しいんだけどね。
“乳母”っていうのが信憑性が高い、って瞬く間に城下に広がってる。
恐らくグルディの耳にも届いているはず。
もしその噂が本当ならば、計画は総崩れ。奴が焦っている様子が目に浮かぶわ。」
ルウルウは、くっくっと喉を鳴らして笑ったが、すぐに真顔になり
「だから絶対に何かを仕掛けてくると思うの。
ナガール、絶対に守るから、あなたも注意していて頂戴。」
ナガールは瞳を潤ませルウルウの手を取り、頷いた。
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