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ルース、動く(1)
イスナは再び、街中大騒ぎになっていた。
「大変ですっ!レイチェがっ!レイチェが行方不明ですっ!」
「何っ!?…いつものように何処かでかくれんぼしてるのではないのか?」
「それが…朝食後、レイチェの姿を見た者が誰もおらず…部屋にこれが。」
差し出されたのはたどたどしい、それでいてしっかりとした筆圧の文字が連なった手紙が一枚。
『えいをたすけにいってきます!
れいちぇ』
「『霙を助けに』?まさかひとりで城下へ行ったと言うのか?」
「どうやらそのようで…急ぎあとを追い掛けています。」
「何てことだ…このような時に…」
頭を抱えたキリヤの部屋がノックされた。
「どうぞ。」
「キリヤ、どうかしたのか?何だか街中騒がしいが…」
「あぁ、ルース…うちのお転婆娘が、お妃さんを助けると手紙を残して城に向かったらしい。
俺もすぐに出発する。」
キリヤはため息をつきながら、手紙をひらひらと振って答えた。
「何だと!?あのちびっ子が!?
城まではかなりの距離があるぞ!途中で何かあったら…俺も行こう!」
「アンタはダメだ!ここに」
「何言ってるんだ!?責任は俺達にある!
それに…そろそろ決着をつけねばならない。
身体ももう大丈夫だ。」
ルースは制するキリヤを無視して身支度を始めた。
と、そこへルウルウの使いの繋ぎが駆け込んできた。
「申し上げます!レイチェは無事っ!エルグ様が保護しておられます!」
「何っ!?本当か!?」
「何とっ!?エルグが?」
「はい!薔薇園に倒れていたのを奥方が見つけ介抱、今ではすっかり元気だそうです。
もう1つ朗報です!
ラジェ様は今までの悪行を少しずつ告白している模様。
ガルーダ様、エスティラ様始め、主だった大臣達立ち合いの元、様々なことが明らかにされています!
勿論グルディとの関係も…軍を上げて奴の館へ向かっています!」
「ラジェが…改心したのであろうか?
こうしてはいられない!すぐに行かなければ!」
そう言うや否や、ルースは窓から飛び出して行ってしまった。
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