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ルース、動く(5)

流石にいくらクロだとはいえ、神官の館に踏み込むとなるとそれなりの手続きが必要だ。 緊急事態だといっても通用しない。後々面倒なことになるのは避けたい。 だが、法的なことはエスティラが既に動いていて、あと10分程で踏み込めると、こちらも連絡があったばかりだった。 もし逃げていたとなると、捜索部隊の編成も…それはエルグが抜かりなくやっているだろう。 すぐにルース様にお伝えせねば。 ガルーダはナルジと共にルースの元へ。 「ルース様っ!」 「ガルーダ、世話を掛けた。申し訳ない。 ナルジ、息災そうだな。お前にはこれからひと肌もふた肌も脱いでもらわねばならんのだが。」 「いえ…とんでもございません。 早速ですが、軍がグルディの館を包囲しておりますが、やけに中が静かだと報告がありました。 令状はエスティラ様が手配したので、あと10分程で踏み込めるとのこと。 …万が一逃亡していたら…行先は神域かと。」 「マズいな…あそこは奴のテリトリーだ。 何を仕掛けてくるか分からん。 マズい…あそこには“水鏡”があるっ!!」 と、そこへ密やかなノックの音とともにキリヤが飛び込んできた。 「ルースっ!グルディが逃げやがった! 俺の仲間も含めて館の従者達が倒れているのが見つかった! どうやら眠り薬を飲まされたらしい。」 「何っ!?…やはり神域で何かしようと企んでいるに違いない。 ナルジ、キリヤ、神域に向かうぞ! ガルーダ、霙を頼む!」 「やだっ!俺も行くっ!」 「霙、ここにいろ。いいな?」 ルースは霙の顎を掴むと、そっと口付けた。 「…霙、頼む。いい子だからガルーダとここにいろ。 必ず、必ずお前の元に戻ってくるから…その時は俺を思い切り抱きしめてくれ。」 そう言うと、もう一度霙の唇を奪った。 派手なリップ音を鳴らして悪戯っぽく微笑むと 「ナルジ、キリヤ、行くぞ!」 霙がぼおっとしている間に、ルース達はあっという間にいなくなった。

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