147 / 191
足掻き(1)
グルディは苛立っていた。
ユウスルを追い出したラジェと連絡がつかなくなり、ラジェの扱いに手をこまねいていたところへ、ジェリクの失敗の報が飛び込んできたかだ。
「何と不甲斐ない…役に立たぬ愚か者めっ!
何故邪魔が入ったのだ?計画通りに事は運んだはずだろう!?」
側近中の側近、アイルは震えながらも落ち着いて答える。
「新しく入った女侍従に相当腕の立つ者がいて、送り込んだ者達は皆、其奴らに取り押さえられたそうで、ジェリクもユウスルも…捕らえられて今頃は…引き渡されていると思われます。」
「何!?そんな女など見極められなかったのか!?あの役立たずのジェリクめがっ!くそっ、人選に失敗したかっ…
まさか…まさか私のことを暴露したのではないだろうな…奴から私のことがバレたら…もう終わりだっ!」
「ジェリクどころか、ラジェ様までもが全てを白状しているそうです!
先程から上空が騒がしく、恐らく軍がこちらに向かっていると思われますっ!」
「何とっ!?ラジェを始末したのではなかったのか!?」
「それも失敗に終わっておりますっ!」
「何故報告しないのかっ!?」
「それが分かったのも先程でして…」
「言い訳は無用!すぐに逃げなければ。」
「この館の水源に睡眠薬を流しました。
万が一刺客が紛れ込んでいても我々を追ってくることはできません。
さあ、急ぎ支度を!」
「アイル、地下道を使うぞ。外は無理だ。
一旦神域に向かう。よもや私が城内に戻るとは思うまい。
王家の宝の水鏡を持ち出せば、私に手出しすることはできなくなるからな。」
アイルは頷くと、すぐに大きな鞄を持ってきた。
「最低限必要な物はこの中に。
さあ、行きましょう。」
「何と用意周到な…こうなることを予測していたのか?」
アイルは大きく頷いた。
ともだちにシェアしよう!