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足掻き(2)
「私はあなたの企てを知ってから、『万が一』ということをいつも考えておりました…昔あなたに命を助けていただいてから、一生お仕えすると決めております。
ですから…どこまでもお供いたします。
グルディ様、我々は一蓮托生ですよ。」
「アイル…」
「さ、急がねば。すぐにこの館も包囲されてしまいます。
使用人達の声も聞こえなくなってきました。
恐らく水を口にした者達は眠りについたのでしょう。
彼らの命を取らなかったことを褒めて下さい。」
「…分かった。行こう。」
グルディが部屋の奥の書棚を左右にずらすと、小さな扉が現れた。
それは古びており、もう長い間使用されていないことを物語っていた。
「よもやここを使う日が来るとはな。」
がちゃり ぎぎぎっ
かび臭い真っ暗な通路を蝋燭の火を頼りに進んでいく。
先導するアイルもグルディも無言だった。
微かに大勢の足音と叫ぶような声が聞こえてきた。
恐らく館に軍隊が踏み込んだのだろう。
あちこちから地響きのような音がする。
一体どのくらいの者達が踏み込んだのだろう。
ぶるりと身体を震わせると、グルディはひたすらに神域を目指した。
このままでは終われない、終わらせない。
ルースのいない今、この龍の国を束ねることができるのは私だけだ!
ジェリクなんぞ使うのではなかった。
私自身がナガールと契れば良かったのだ。
そうすれば“私の血を引く子”が天下を取ったのに。
いくら王族の血を引くとはいえ、あんな何処の馬の骨とも分からぬ女の子供のラジェなんぞ、さっさと始末しておけば良かった。
忌々しい。
もっと忌々しいのは異世界からやって来たルースの番だ。
でも奴のお陰でルースの命を殺めることができたのだから良しとせねば。
まさか既に子を孕んでいることはないだろうな?
もしそうであっても、あの水鏡を使って奴を亡き者にすれば…
「グルディ様っ、着きました!」
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