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足掻き(5)

「痛てててっ…一体何が…水鏡…水鏡は何処だっ!?」 不意打ちで足を蹴られ、唸りながらその場に蹲ったグルディは、きょろきょろと辺りを見回した。 「霙っ!」 即座にルースが、倒れた霙の元へ駆け付けた。 横向きに倒れた霙は、胸にしっかりと水鏡を抱きしめていた。 水鏡は、まるで安堵したように水面を僅かに揺らしながら、美しい虹色の輝きを放っていた。 ルースは愛おしい伴侶を抱き起こそうとしたが、霙は背中を打ったためか呼吸困難になりひゅうひゅうと喉を鳴らしていた。 血の気が引いて少し顔色が悪い。 ルースは、霙を寝かせたまま怪我がないか確かめ始めた。 「霙、大丈夫かっ!?何という無茶を…何処か痛いとこはないか?」 「へへっ。大丈夫…痛っ…ルース…水鏡、大丈夫かな…」 霙は、ルースに水鏡を差し出そうとしたが、手が伸びない。 不審に思ったルースがそっと霙の身体の後ろを覗き込んだ時、その背中が、じっとりと赤く染まっているのに驚愕した。 「霙っ!?」 「痛っ…背中が…ちょっとだけ痛い…」 「“ちょっとだけ”じゃないだろっ!? そのままじっとしてて。 あぁ、霙…すぐに手当てをしてやるから待ってろ! グルディめ、許さん!」 その場にいた者達には、グルディしか視界に入っていなかった。 そう。 いたのに。 音もなく、ルースと霙に近付いたに、霙の側にいて油断していたルースは突き飛ばされ、数メートル吹っ飛んだ。 「ぐっ」 「はははっ…形勢逆転ですな。」 「アイル!良くやった! …ルースが生きていると分かった今、コイツが万が一にでも奴の子を孕んでいたら厄介だ。 そうだ…水鏡に戻してやる!空間の藻屑と消えてしまえっ!」 「止めろっ!!!霙に手出しをするなっ!!!」 「おっと、その前にコイツの首を切っ裂いてもいいのか?」 見ると、横たわった霙の首筋に一振りの太刀が押し付けられていた。 アイルが少し太刀を滑らすと、霙の白い喉元に一筋の赤い線が浮き上がった。 「やめろォーーーーーーっ!!!!!」 ルースの身体が光り始めた。

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