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足掻き(6)

ナルジが叫ぶ。 「ルース様っ!理性を失ってはなりませんっ! 今の霙様ではあなたを止められないっ!!」 ふはははっ グルディの高笑いが神域に響き渡った。 「くくくっ…このまま喉を切って冷たい(むくろ)を抱きしめるか…水鏡に吸い込まれて跡形もなくなった番を永遠に求めるか…… ルースよ、最後の情けだ。 どちらか好きな方を選ばせてやる!」 「霙に手を出すなっ! 奪うなら俺の命にしろっ!」 ルースの身体は既に、怒りで金色に燃えていた。 「おっと……恐ろしや恐ろしや。 しかし…国王が『ただの龍』になりゆく様を見るのもまた一興か。 はははっ…」 霙を人質に取られていては、グルディ達に手が出せない。 少しでも動くと霙の命が危ないのだ。 ナルジとキリヤも距離があり過ぎて取り押さえることもできず、手をこまねいていた。 ルースは何とか己の怒りを鎮めようとするが、手が届きそうで届かぬ、苦痛の表情を浮かべている最愛の霙の姿を見るだけで怒りが更に増していく。 「マズいな…」 ナルジがボソリと呟いたその時。 ガシャーーン とガラスが割れる派手な音が上から聞こえたと思う間もなく、大小2つの青い光が落ちてきた。 「ぐえっ」「うがぁっ」 グルディとアイルは互いに左右反対方向に吹っ飛び、壁に激突した。 「えいっ!」 小さな光は幼女の姿になり、霙に抱きついた。 「レイチェっ!?」 キリヤが叫ぶ。 大きな光は若い女の姿になり、倒れ込んだグルディに反撃する余裕すら与えず、腹に渾身の一撃を。 そして反対側に飛ぶように駆けると、起き上がって太刀を振りかざすアイルをものともせず、回し蹴り一発で吹っ飛ばした。 グルディもアイルもぴくりとも動かない。 ルースもキリヤもナルジも、瞬き一つする間の出来事に、呆然としていた。 そこには、ぱんぱん、と手の埃を払ったルウルウが息ひとつ切らすことなくドヤ顔で立っていた。

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