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足掻き(8)

龍の国がひっくり返るような一大事であった。 ひとびとはルース達の無事と大活躍を驚きを持って喜ぶとともに、悪人達が芋づる式に捕まったことに安堵し、長い期間敵対視していたイスナに対する見方も180度の転換を成しつつあった。 グルディ達に加担した者は罪の大小に関わらず全て捕らえられ、裁判を受けることとなった。 黒幕がいなくなった今、刑を軽くしてもらおうと素直に自白する者ばかりでスムーズに進んではいたが、グルディとアイルの2人だけは頑として罪を認めず、黙秘権を貫いているらしい。 決着までには相当の時間と労力を要するだろう。 ルースが大騒ぎしていた霙の背中の傷は、出血が酷かったものの骨や内臓に異常はなく、時間の経過とともに塞がっていくものだった。 ラジェは…自分のしてきた行いを悔いて、全てを打ち明けた。 最大の罪である、義理の母を殺めたという事実は消えない。 悪党グルディにそそのかされたとはいえ、自分の未熟さと思い込みが招いたことだ。いくら前王の血を引く皇太子とはいえ、特例は許されない。 「ルース様にお会いしなくてもよろしいのか?」 「今更合わす顔など持ち合わせてはいない。 自分のしたことの責任は自分で償う。 この先、生きてお会いすることがあれば…もし…もし、万が一にでも許してもらえ…いや、いいんだ。 例えこの身が滅んでも、許されることではないのだから。」 これからどのくらいの長い時を、氷に閉ざされた凍てついた牢獄で過ごすのだろう。 「間違った考えを抱かなければ、ルース様の良き理解者となり片腕にもなっていただろうに。」 惜しいことよ、と呟くナルジに伴われて、ラジェは抗うことなく罪人として北の塔へと去って行った。 その後暫く騒動は続いたが、ルースがいつも通りの政務を始めたことで、次第に落ち着きを取り戻していった。

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