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おあずけ(1)
大捕物の少し前のこと…
脱兎の如く走り去る霙の後ろ姿を偶々霙を訪ねてきたルウルウとアシェナ、レイチェが見つけた。
「えいのようすがへんだ…なにかあったんだ!
ルウルウ、おいかけるよっ!」
「レイチェっ!」
レイチェの素早い行動に、ルウルウも慌てて追い掛ける。
ルウルウはアシェナに、ガルーダ宛の伝言を頼むことも忘れなかった。
彼女達が追いついた時には、霙が神域に飛び込んだ後だった。
形勢逆転に見え安心したのも束の間、卑怯な悪党共に再び霙が囚われたのを見るや、ルウルウとレイチェはこっそりとその場を離れ、屋根に舞い降りた。
そしてグルディ達が油断したその瞬間を狙って、ガラスをぶち壊し飛び降りると、ルウルウお得意の一撃を食らわしたのだ。
まさか上から若い女と少女が降ってくると思いもしなかったグルディとアイルは、簡単に吹っ飛び捕らえられたのだった。
「それにしても。」
今日もまた霙のベッドの横に陣取り、ルースが愚痴る。
これで何度目になるのか。
毎日毎日、数時間毎に繰り返される愚痴に、霙もいい加減耳タコ状態だったが、ルースの気持ちも痛い程分かるので、したいようにさせている。
こんなにしつこい性格だったんだろうか。
それでも、これくらいでルースの気が済むなら安いもんだ。
「何度言えば俺の言うことを聞いてくれるんだ!?
あれ程『大人しくしていろ』と申し伝えたであろう?
挙句にこんな大怪我を負って…」
「だって!」
霙が起き上がって反論する。
「俺だって、俺だって…ルースの…龍の国の役に立ちたかったんだ!
あのままじっと待ってるなんて、俺にはできない!俺は最後返事しなかったよ!?
それに助かったじゃないか!」
「それはルウルウ達皆んなのお陰だろ?
お前だけなら……命はなかった…」
そしてじっと見つめられ、そっと抱きしめられ、その存在を確かめるように、頭のてっぺんからゆっくりと撫でられるのだ。
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