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おあずけ(2)
その頃にはルースの怒りも収まり、逞しいそのの胸にすっぽりと包まれた霙は、はにかみながら何やら嬉し気に耳元で互いにひそひそと内緒話をしては、顔を見合わせてクスクスと笑い合っている。
毎度毎度繰り返される、側から見たらただのイチャつきを見せられるガルーダ達の身にもなってほしい。
「…ガルーダ様、また始まりましたよ、いつものやつ。今日はこれで3回目ですかね、まだ少ない方か……
はぁ…いつになったら止めて下さるのかしら。」
呆れたようにルウルウが言うと、ガルーダは微笑みながら返す。
「ルウルウ、龍の国が幸せな証拠ですよ。」
あれからルウルウはその腕を買われて『ぜひ龍の国の軍に!』という熱烈なオファーを丁重に断り、ガルーダの元で霙の侍従としての一歩を踏み出していた。
元々、ラジェに仕えるほどの教養と振舞いを身に付けており、それに加えて武芸の達人である。霙の側付きにうってつけであったのだ。
同じくオファーを受けたアシェナはその申し出を受け入れ、陸軍に配属となった。
好奇心旺盛で人心を掌握するのに長けた彼女はたちまち人気者となり、いつの間にかガルーダのもう1人の息子、グリスと恋仲になっているらしい。
「あーぁあー…あっちもこっちも春が来たーっ…私は…まだいいか…」
「ふふっ。ルウルウ、あなたも『我が嫁に』と、あちこちからひっきりなしに求愛されているそうじゃないですか?」
揶揄うようにガルーダが問い掛けると
「私より弱っちい男はお断りですよ。」
「おやおや。ひとりいるじゃないですか。
組手で唯一あなたを負かせて、一際熱心に心を伝えてくる男 が。」
「ガルーダ様っ!」
ルウルウは真っ赤になっていた。
その証拠に、ルウルウの部屋には毎日束になって手渡される深紅の薔薇で埋め尽くされそうになっていた。
その送り主は、エルグの部下で空軍副隊長のひとり、オーディス。
ルウルウより少し年上の精悍で聡明な男だった。
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