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幸せに満ちる国(1)

流血騒ぎのその後―― ガルーダやルウルウが目を光らせていたせいで、俺に構いたいルースはそれが叶わない上に会うことすらできずに、相当我慢していたようだ。 ルースの部屋の壁のあちこちに、拳大(こぶしだい)の大きさの穴が幾つか空いていたとかいないとか… まぁ、俺だって(流石に穴を空けたりはしないが)我慢してたから、心情的には似たようなもんだったけど。 そのお陰で清く正しい生活を送った俺は、短期間で傷もすっかり完治し、その間に結婚式の全ての手配も整っていた。 「床上げと同時に結婚式だなんて、早急過ぎないか?俺だって心の準備というものが」 「霙、何言ってるんだ!? 一日も早く国内外に正式に俺達の結婚を知らしめないと! 俺がどれだけ待ち焦がれていたか分かってるんだろう?」 ルースに泣くように懇願されて、結局俺が折れた。 そういう訳で俺達は今、神域の水鏡の前に立っている。 ルースも俺も龍の国の正装で…こんな凄い手刺繍のガウンなんて見た方がない。 白地に金はルースの、俺のは白地に色とりどりの華やかな物。模様は龍の国に伝わる伝説の数々が散りばめられているんだとか。 聞くと、国中の職人達が奪い合うようにしてこぞって施してくれたんだそうだ。 頭には王家の印の、宝石をふんだんに纏った冠が被せられている。 「…長かった…今日のこの日を迎えるまで、本当に長かった…」 ルースの目が潤んでいるのは気のせいではない。 本当にいろんなことがあって、一杯我慢したもんね。 「霙、これから先何があっても未来永劫お前を離さないと誓う。 全身全霊をかけて愛している。」 「ルース、生まれ変わっても必ず探し出すから…俺を愛して…魂からあなたを愛しています…」 吸い寄せられるように抱き合って誓いのキス。 途端に鳴り響く鐘の音と、それを聞いた神殿を取り巻いていたひと達からの大歓声が唸るように聞こえてきた。

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