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幸せに満ちる国(2)
これから何が起きても、2人でしっかりと歩んでいく。
抱かれた肩と繋がれた手の温もりがある限り。
この異世界の龍の国で俺は心から愛するひとと生きていくんだ。
一連の儀式を終えバルコニーに出ると、広場はひとの波で埋め尽くされていて、俺たちの姿を見つけた大勢のひと達から大歓声を受けた。
爽やかな風が吹き、目に映る新緑が美しい。
空には色とりどりの鱗の光が煌めいている。
再びルースが、皆に見せつけるように俺を抱き寄せキスをする。
「んんっ!?」
途端に悲鳴のような大歓声や指笛が鳴り響いた。
腕を突っ張っても退きやしない。
もう、ばか…まぁ、いいか。俺達は結婚したんだから。
拒否するのを止め、そっとルースの腕に手を添える。
どおっ、と地響きのような一際大きな喝采が上がり、空からは薔薇の花びらが舞降ってきた。
息苦しくなった頃、やっと唇を解放したルースが囁く。
「見ろ。これがお前の守った龍の国だ。
今までもこれからも。」
そしてまた、唇を奪われる。
背後から揶揄いの声を掛けられた。
「おいおい、いつまでイチャついてんだよ。
お前らに煽られて、龍の国の出生率が上がるかもなー。」
「ははっ!
夫夫 仲睦まじいのは良いことだし、次世代を担う子が増えるのは良いことだ!
キリヤ、お前ん家もレイチェの妹か弟はどうだ?」
「ふっ、大きなお世話だよ!
まぁ、兎にも角にもおめでとう!」
「えーーーい!おめでとうっ!」
「レイチェ!ありがとう!」
賑やかに華やかなお祝いの言葉のシャワーが降り注ぐ。
傍には、俺達を優しく見守るガルーダ夫夫がいて、ルウルウは俺の長いヴェールを皆が踏まないように移動させるのに忙しい。
もう一度、2人で寄り添って階下の人達に手を振ってから部屋に戻ってきた。
少し落ち着くと、段々と恥ずかしくなってきた。
「ルースっ!あんな所で、キッ、キスなんて!
国民全員に見られちゃったじゃないかっ!
ばかっ!!!」
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