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幸せに満ちる国(3)
ルースは俺の腰を抱いたまま、悪戯っぽい笑みを浮かべ
「いいじゃないか。
異世界からやってきたお前が、我が国の正装を身に纏い、それが余りにも美しくてかわいらしくて…俺が我慢できなかったんだから。
『手を出すな、これは俺の唯一無二の番だ』
『龍の国の国王夫夫は超絶愛し合ってる』
と、皆の目に焼き付けて宣言したかったのだ。
これで我が国にマウントを取ろうとする他国は減るだろう。
…悪党共を一掃したことも知れ渡っているみたいだしな。」
「それって…俺は龍の国を守るために利用されただけ!?」
ワザと頬を膨らませて怒ったフリをすると
「利用!?何を訳の分からぬことを言ってるんだ!?
愛してるからに決まってるだろう!?
…それでも分からなければ、今夜は」
「うわぁっ!ストップ!待って!
それ以上言わなくていいっ!」
俺はルースの口を塞ぎ、その後に続くであろう言葉を止めた。
今夜…今夜…実質“初夜”だもんな。
初めてじゃないけど、久し振りだから、あの、その…アンナコトやコンナコト……
熱く見つめ合って抱擁する俺達に、ルウルウが冷静に告げる。
「ルース様、霙様…ご挨拶のお客様方が広間でお待ちですよ。
イチャつくのはそれが終わってからにお願いいたします。」
「ルウルウ…全くもってその通りだ…
客人をお待たせしては申し訳ないし、さっさと済ませて早く霙と2人っきりになりたい。」
「ルース、もう二度と流血沙汰にするんじゃないぞ。
お妃さん、無体なことをされたら蹴り飛ばしてやれ!」
「キリヤっ!」
「ははっ!キリヤ、肝に銘じておく。」
キリヤは笑いながら、先に広間へと行ってしまった。彼もVIP待遇の招待客のひとりなのである。
ご機嫌なルースとちょっぴり不機嫌な俺は、それでもぴったりと寄り添って、大勢の招待客の待つ広間へと向かった。
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