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幸せに満ちる国(5)

そう言うや否や、ルースは俺に近付くと 「少し休もう。」 と囁いて俺を抱き上げた。 「うわっ!?」 ふわりと身体が宙に浮き、それを見ていた広間を埋め尽くしたひと達から歓声が上がる。 口々にルースと霙に好意的な言葉が囁かれる。 (ルース様は霙様にぞっこんだ) (これで龍の国も安泰だ) (何と仲睦まじいことよ) その声々を背に、霙を横抱きにしたルースはカーテンの後ろに引っ込んで行った。 「ルっ、ルースっ!皆が待ってる! 抜け出しちゃダメだよ!」 「霙、慣れぬことばかりで疲れただろう?気付かなくて悪かった。 少し休憩してからまた戻ればいい。」 優しく微笑むルースの声に、強張っていた肩の力が抜けて、逞しい胸に頬を寄せた。 確かに。 ぶっ続けのお披露目でお腹も空いてるし、もう疲労困憊(ひろうこんぱい)で、早く終われと願っていたのは事実だけど。 あんなに大勢のひと達が、俺達のために集まって祝福してくれているのを嫌だとか言うのはお門違いだと思っていたし、ルースの伴侶となった今は、それが務めだと感じていたから。 部屋に戻ると、ガルーダが飛んできてすぐにお茶を出してくれた。 「霙様、休憩のタイミングを失って申し訳ありませんでした。」 ありがと、と言って一気にそれを飲み干し、お代わりも貰った。 「…ふう…ガルーダ、ありがとう。喉、カラッカラだった…」 「霙様、これを…」 「ルウルウ!あっ、細巻っ!?うわぁ、ありがとう!」 お腹が空き過ぎて、咳き込みながら夢中で細巻を口に放り込んでいく俺に、ルースがぴったりくっ付いて離れない。 「霙、すまなかった。 俺にとってはこれは当たり前のことだけど、もっと配慮せねばならなかったな。 大丈夫か?」 俺は食べるのに必死で、もごもごと口に頬張ったまま『大丈夫』だと頷くだけだった。

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