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幸せに満ちる国(6)
お皿に盛られた細巻は、あっという間に俺の腹に収まった。
「…はぁ…お腹一杯…ガルーダ、ルウルウ、ありがとう。ご馳走様。美味しかったよ。
また作ってくれる?」
「勿論ですよ!私の配慮不足で霙様を飢えさせてしまうところでした。
申し訳ありませんでした。」
「もう大丈夫!
ルース、皆待ってる。行こう!」
「大丈夫なのか?」
「うん!だって俺達のために集まってくれてるんだろ?
それならその期待に応えなきゃ。
辛くなったら今度はちゃんとルースを呼ぶから。」
「…分かった。その代わり、俺の側にいろ。」
また、ふわりと抱き上げられて、広場に戻っていく。
俺も少しでもルースの温もりが欲しくて、抗わずにその身を預けていた。
俺達が姿を表すと、わっ、という歓声が上がった。誰一人として帰る者もなく、皆、大人しく俺達のことを待ってくれていたのだ。
戻って来て良かった。自分の責務が果たされたようでホッとした。
ルースは何故か俺を抱いたまま、自分の椅子に腰掛ける。
広間が騒 めいた。
「ルっ、ルース!?」
「俺の側にいろ、と申し付けたであろう?
こうすれば、お前の具合が悪くなってもすぐ分かる。」
ドヤ顔のルースはそう囁くと、広間の端まで聞こえるような大声で宣言した。
「待たせて申し訳なかった。
ひと時も霙と離れたくない故に、このままで失礼するぞ。」
その言葉に広間にいた者達から、割れんばかりの拍手と大喝采が起こった。
それから…俺はルースの膝に抱かれたまま、次々と祝福を受けた。
遠慮して最後にやって来た、キリヤを先頭にしたイスナの懐かしいひと達からも揶揄いと祝福を受け、和やかな雰囲気の中、長い長いお披露目がやっと終了したのだった。
今夜は無礼講で、あちらこちらで酒宴が開かれるらしい。
王宮の秘蔵の酒が振る舞われるとあって、街中の灯りが煌々とともされて、賑やかさを増していた。
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