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幸せに満ちる国(7)

街中の賑わいとは打って変わり、静寂に満ちた王宮には、蝋燭の明かりのみが灯されていた。 ルースは 「霙と離れるのは嫌だ!」 と駄々を捏ねていたが、ガルーダに懇々と諭され、渋々自分の部屋に戻り支度を始めた。 俺はルースとは別々の風呂場で身体を磨き上げられ、凄くいい匂いのする香油のような物を塗られ、柔らかな素材のローブのような服を着せられた。 そして最後に、細かな手の込んだ細工の施されたネックレスと腕輪を嵌められ、ルースの部屋に連れて行かれた。 もうこの頃には、最初は小っ恥ずかしくて仕方がなかった“他人に全ての支度をされること”にも随分慣れて、まるで人形のように身体を委ねていた。 「私がお供するのはここまでです。 お会いできるのは明後日…どうぞごゆるりと。」 「ガルーダ…心配いらないよ。ありがとう。 行ってきます。」 もう既に身体を許し愛を確かめ合ったとはいえ、式を終えた番は2人っきりで過ごすのが龍の国の決まりなんだとか。 少し重いドアを開け内鍵を掛ける。 がちり これでもう外からは入っては来れない。 ルースと…文字通り2人っきりになった。 重厚な音に少々慄きながら、ゆっくりと進んでいく。 2つ目のドアの鍵を掛けた。いつもはこの部屋でルースが待っているんだけど…何処だろう。 『真っ直ぐに進んで来い。』 ルースはそう言ってたけど…… 戸惑いながら、いつもは壁になっているはずの3つ目のドアを開け内鍵を掛け振り向くと、ルースが満面の笑顔で待っていた。 「霙…」 「ルース…」 磁石が引き寄せ合うように、ひしっと抱きしめ合う。 「やっと、やっとこの腕に…霙、あぁ、霙…」 感極まり言葉が続かないルースに、俺も言葉が出なくて、背中に回した手に力を込める。 トクトクトクトク 少し早く打つ鼓動がこれからの2人の行為を期待しているようで、恥ずかしかった。 けれどそれ以上に、ルースを求める気持ちが溢れ出して止まらなかった。

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