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幸せに満ちる国(8)
「…霙、背中の傷は、もう…障りはないのだな?」
遠慮がちに聞いてくるルースに、俺はルースの首に腕を巻きつけ、耳元で囁いた。
「擦っても…もう大丈夫…」
ルースは眉根を寄せて困った顔をした。
あれ?何か変なこと言ったかな?
不安に思いながら見つめていると、俺の頬をむにむにと摘みながら
「…煽るな…自制が効かなくなる…
全く、無自覚というものは恐ろしいな、霙。」
「え?何言ってるの?」
「初夜の儀を終え迎えが来るまで抱き潰す、と申しておるのだ。」
ひっ
息を飲んだ俺の唇が塞がれた。
元々体格差がある上に、ルースの逞しい身体にがっちりと身体を拘束されて逃げられない。
口を開けろと、唇をノックされる。
ルースの甘い匂いに包まれてクラクラと酔ってしまう。はなから抗うつもりはないけれど、次第に抵抗する力が解けていき、ぬるりと熱い舌が捩じ込まれた。
「ん…んふっ、んんっ…」
上顎をこしこしと擦られ、擽ったさに首を振り腕を突っ張って逃げを打っても、執拗に追ってくるルースの舌は離れない。
次第に息苦しくなってバシバシ胸を叩くと、やっと出て行ってくれた。
「っ、はっ、はっ…ルース…苦しい…」
「鼻で息をするのだと教えてやったであろう?」
ルースは鼻先にキスを一つ落とすと、軽々と俺を横抱きにして歩き出した。
振り落とされまいと、ルースの首根っこに掴まると、目の前に天蓋付きの大きなベッドが現れた。
「うわ、凄っ…」
まるで映画かアニメに出てくるような超特大のベッドには、カーテンが天井近くから緩やかな曲線を描いて、俺達を待っていた。
「…ここ、ルースの部屋、だよね?」
「ここは式を終えた王とその伴侶が使う特別な部屋なんだ。一生に一度しか使わない。
いつも使っているのは2つ目の部屋までだ。
だから…俺もここに入るのは初めて、なんだ。」
ルースが少し照れている。
「…特別な場所なんだね…」
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