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幸せに満ちる国(11)

俺を優しく見つめるルースの瞳が、ゆっくりと近付いてくる。 ちっ、近いよ!ルース、近いって! 至近距離のイケメンの破壊力、半端ないっ! 今から何をされるのか、頭の中をアノ映像がぐるぐる回っている。 心臓は、さっきよりも暴れ出して、今にも飛び出していきそうだ。この音、ルースにも聞こえてるんじゃないか? 脈が早くなり、じっとりと汗もかいている。 あぁ、どうしよう。 俺、抱かれる。 目を閉じると、ルースが困ったように呟いた。 「…霙…まだ覚悟はできていないのか?」 「え!?」 ゆっくりと目を開くと、泣きそうな顔のルースがいた。 「ルース?」 ルースは俺の眉間を人差し指でそっと撫でた。 「…ここ…力がはいって皺が寄っている…」 覚悟?覚悟ってどういう意味? 俺…最初は戸惑ってたけど、ルースのことを愛してる、って散々言ってきたし、態度でもそうしてきたよね? さっきもそう言ったよね!?ちゃんと聞いてた!? 何だか無性に腹が立ってきて、その手を払い除け、飛び起き叫んだ。 「覚悟っ!? …勝手に俺をこの世界に呼び出して、元の世界に帰れなくして、身体も心も奪って結婚してっ!!! ルースをこんなにも愛してしまった俺に対して『覚悟』って、何なんだよ、それっ!!! 俺の気持ちは!? …ルースの…ばかぁっ!!!」 ぼろぼろ涙を零しながら訴える俺に、ルースはどうしてよいのか分からずにオロオロしている。 「霙、霙?どうして泣く? 俺は何か気に触ることを言ってしまったのか? あぁ霙、俺はどうしたら」 「ルースのばかぁっ! “覚悟”じゃないっ!“愛してる”んだっ! …ただ、慣れなくて恥ずかしくて…どうしていいか分からないだけ… そんな俺の気持ちを“覚悟”だなんて言わないでほしい…」 「霙っ!」 ルースに飛び付かれた勢いのまま、ベッドに2人して倒れ込んだ。

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