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幸せに満ちる国(12)
ばか。ルースのばか。ばかばか。
悪態をついて暴れたいけど、痛いくらいに抱きしめられていて動けない。
俺達の体重を受け止めたベッドは、ぽむぽむと柔らかく跳ねて、俺は少し不貞腐れながらも、覆い被さっているルースの重みを愛おしく感じていた。
揺れが治まった頃、ルースが俺の肩に顔を埋めたまま話し掛けてきた。
「…霙、気を悪くさせた。悪かった。
そんなつもりではなかったのだが…
眉間に皺が寄る程、お前の身体中に力が入っていて。
一瞬、拒否されてる、と思ってしまったのだ。
…そうではなかったんだな、良かった…」
ほぅ、と大きく息を吐いたルースが、視線を合わせてきた。
俺はその視線をかっちりと合わせて言った。
頬が火照って熱い。
心臓も猛ダッシュしている。
「違うよ!拒否なんて、してない!
さっきも言っただろ?
…そういうことって、恥ずかしくて。
慣れてないから、また怖くて。
ルースのカッコいい顔が寄ってきたら、もう心臓がバクバクするし、イスナでした初めの時のことを思い出したら、どうしたらいいのか分からなくなっちゃって…
だって俺、元の世界で同性でソンナコトの経験なんてないし。
ルースだから…ルースとしかソンナコトしたくないし。
こんな男の声で喘がれたら嫌かな、とかさ。
俺のモノ見て萎えちゃったりしないかな、とか。
そんなことも時々考えちゃったりして…
とにかく俺の愛してるのはルースなんだ。
ルースだから、何でも許す。」
「霙…」
ルースは俺の前髪を優しく撫で上げてきた。
触れる手の平が、熱い。
そっとおでこにキスされた。
「霙、お前の気持ちは分かっていたけれど、俺ばかりが思いを強く寄せていたのかと思っていた。
お前も…同じくらいに俺のことを…」
「もう!いい加減に分かれよ!自信持てよ!
四六時中『愛してる』って言わなきゃ分かんないのか!?」
「霙っ!!!」
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