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幸せに満ちる国(14)

振り向いた俺の唇に噛み付いたルースは、その後ぺろぺろと噛んだ痕を舐めると、ちゅ、と音を立てて少し離れた。 至近距離のルースの瞳が潤んでいる。 「…ルース、どうした?」 ルースは再び俺にキスをすると 「霙の背中の傷が…すまなかった…」 と言って黙り込み、俺を見つめている。 あぁ…あの時の…この傷を気にしてるのか。 なーんだ。そんなことか。 俺は微笑むと、ルースに向き直り座った。 「名誉の傷だと言っただろ? ルースをそして龍の国を守った勲章だと。 それとも何か? こんな傷のある俺を抱くのは嫌なのか? さっき散々『愛してる』とか『お前だけだ』とか言っておいて。 あれは全部嘘なのか?」 ルースは俺の肩をぎゅっと掴んだ。 「違うっ!!!嘘偽りなくお前だけを愛している! でも……俺の不甲斐なさのために、この美しい身体に一生残る傷をつけてしまった。 それが悔しくて申し訳なくて、自分が情けないだけだ。」 俺はルースの鼻先にキスをしてやった。 「俺にとってこの傷は…龍の国を守り、ルースの伴侶としてこの国のひと達に認められた…誇り。 これがあるから…もしルースの心が俺から離れても、一生涯ルースを縛り付けることができる…ルース、こんな俺、怖くなった? ふふっ、愛してるよ。」 「霙、お前って…サイコーっ!!!」 骨が軋む程に抱きしめられる。 馬鹿力。息が出来ない。 ルースの肩を拳でドンドン叩くと、やっと気付いてくれたのか力が弱くなった。 「…っ…はぁっ…加減しろよ、バカっ。」 「すまない。あまりに霙が愛おしくて。」 「なぁ、ルース…」 「何だ?」 「…あのさぁ、俺、まだこういうことに慣れないから…お手柔らかに…」 ふっ、と口元を歪めたルースの顔が近付いてくる。 あぁ、キスされる。目を瞑るとはぐらかすようにおでこにキスされた。 むぅ、とふくれると、触れぬところがないくらいに顔中にキスが降ってくる。擽ったくて身を捩ると両頬を固定された。 押し付けられる下半身は熱を帯び、濡れた感触がする。

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