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幸せに満ちる国(18)
それから何度も何度も…『まぐわう』という言葉がしっくりくる程に、ずっとずっと抱き合った。
抱きしめあって眠り、目が覚めては触れ合ってまた何度も注がれて、俺は抱き潰されて、ベッドから降りることができなくなってしまい、全ての行動をルースに頼らざるを得なかった。
そんな俺のことをルースは執事か下僕のように甲斐甲斐しく面倒をみる。
喉が渇いたと告げる前に、ルースがグラスに注いだ水を持ってくる。
自分で飲もうとすると、やんわりと遮られてルースが口に含んだ水を口移しに飲まされてしまう。
お腹が空けばルースが何処からか食べ物を持ってくれ、子供のように手ずから食べさせられる。一口ずつ与えられて、自分で食べることを許してくれない。
「ねぇ、ルース。俺は子供じゃないし、もう動けるから自分のことは自分でできるんだけど。」
そう抗議すると、途端に眉を下げて本当に辛そうな顔をする。
そんな顔を見たら、拒否できなくなる。惚れた弱みとでも言うのか、俺も大概ルースに甘い。
それを良いことに、ルースは俺にピッタリとくっ付いて離れないのだ。
それが嫌じゃないのが困る。
甘ったるい蜜月の始まりだ。
汚れたシーツはルースが交換してくれて、常に新しくサラサラしていた。
洗濯物を何処に持って行っていくのか、食べ物はどう調達しているのかと聞くと
「1番目の扉の前に置いておけば、ガルーダが全て始末してくれるし、食べ物や飲み物もその都度準備してくれている。
今はガルーダしかこの部屋の前まで来ることはできないんだ。」
「ガルーダにも随分迷惑を掛けちゃうんだね。
自分の仕事だけでも忙しいのに。
…こんなに汚しちゃって…後で顔を見るのが恥ずかしいよ。」
「俺達が仲睦まじくしているのがガルーダを始め龍の国の者達の望みなんだ。
そうしているんだから何も恥じることはない。」
それでも恥ずかしいのは恥ずかしいのだ。
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