182 / 191

幸せに満ちる国(20)

ガルーダと、いつの間にか音もなく静かに控えていたルウルウは俺達の前に、服従の姿勢で跪いた。 「この龍の国を今のままの美しい心でお治め下さいますように。」 「霙様、以前にも増してお美しくなられましたね。ふふっ、愛されるっていいなぁ…」 「これ、ルウルウっ! ルース様、霙様。国を挙げてお2人を祝福しています。 窓の外をご覧下さい。」 ガルーダが窓を開けてくれ、ルースに腰を抱かれたまま2人で並んで窓の外を見た。 城下中の家のドアというドア、窓という窓に花輪が飾られ、街中が色とりどりの花に埋もれたようになっていた。 「何と…これはどうしたことか…」 「凄いっ…綺麗…ガルーダ、どうなってるの?」 「誰かが『結婚のお祝いに』と飾り始め、それが段々と広がって、今では全ての家がこのように飾り付けをしているのですよ。 イスナでも、どの家も花で埋もれているようだ、と報告がありました。 ルース様、霙様。 龍の国の民は、お2人のご結婚を心から歓迎して祝福しているのです。」 「俺のことを…俺達のことを受け入れてくれてるんだね…嬉しい……あれ?あちこちに何か黒いものが見える…何だろう…猫?猫の置物?」 「ルース様が霙様のことを『やんちゃ猫』とお呼びになっていらしたので、どうやら黒い子猫の置物も流行っているようですよ。」 ぶふっ 「ルースっ!」 ルースが吹き出した。 釣られてガルーダとルウルウが笑う。 口を尖らせていた俺も、つられて巻き込まれて笑う。 何て幸せ。 俺はルースの胸に頭を預けた。 ルースの手が腰から頭に移動して、優しく撫でられる。 俺はもう、独りぼっちの野良猫じゃない。 こんなにも愛されている。 視線を感じて顔を上げた。 ルースが甘い微笑みを浮かべている。 思わず背伸びをしてその頬にキスをした。 ふふっ、ルース、吃驚してる。

ともだちにシェアしよう!