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幸せに満ちる国(20)
ガルーダと、いつの間にか音もなく静かに控えていたルウルウは俺達の前に、服従の姿勢で跪いた。
「この龍の国を今のままの美しい心でお治め下さいますように。」
「霙様、以前にも増してお美しくなられましたね。ふふっ、愛されるっていいなぁ…」
「これ、ルウルウっ!
ルース様、霙様。国を挙げてお2人を祝福しています。
窓の外をご覧下さい。」
ガルーダが窓を開けてくれ、ルースに腰を抱かれたまま2人で並んで窓の外を見た。
城下中の家のドアというドア、窓という窓に花輪が飾られ、街中が色とりどりの花に埋もれたようになっていた。
「何と…これはどうしたことか…」
「凄いっ…綺麗…ガルーダ、どうなってるの?」
「誰かが『結婚のお祝いに』と飾り始め、それが段々と広がって、今では全ての家がこのように飾り付けをしているのですよ。
イスナでも、どの家も花で埋もれているようだ、と報告がありました。
ルース様、霙様。
龍の国の民は、お2人のご結婚を心から歓迎して祝福しているのです。」
「俺のことを…俺達のことを受け入れてくれてるんだね…嬉しい……あれ?あちこちに何か黒いものが見える…何だろう…猫?猫の置物?」
「ルース様が霙様のことを『やんちゃ猫』とお呼びになっていらしたので、どうやら黒い子猫の置物も流行っているようですよ。」
ぶふっ
「ルースっ!」
ルースが吹き出した。
釣られてガルーダとルウルウが笑う。
口を尖らせていた俺も、つられて巻き込まれて笑う。
何て幸せ。
俺はルースの胸に頭を預けた。
ルースの手が腰から頭に移動して、優しく撫でられる。
俺はもう、独りぼっちの野良猫じゃない。
こんなにも愛されている。
視線を感じて顔を上げた。
ルースが甘い微笑みを浮かべている。
思わず背伸びをしてその頬にキスをした。
ふふっ、ルース、吃驚してる。
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